Claudeで宿泊者名簿の記載事項と保管を点検する手順 — 旅券番号と3年保存の抜け
旅館業法6条と施行規則4条の2が決める宿泊者名簿の記載事項と3年保存を、チェックイン用紙と名簿CSVに当てて抜けを洗い出す手順です。ダミーデータで試す方法も載せます。
宿泊者名簿は、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業のすべてに備え付けの義務がある帳簿です。根拠は旅館業法6条で、記載事項の細目と保存期間は旅館業法の施行規則4条の2が決めています。チェックイン用紙や名簿のExcelがこの条文とずれていても、日々の運用では気づきにくい種類の不備です。
条文に書かれた項目と手元の様式を突き合わせる作業は、Claudeに任せやすい仕事です。この記事は、チェックイン用紙(PDFやWord)と名簿の一覧(CSV)をClaudeに読ませ、記載事項の抜けと保存期限の管理を点検する手順をまとめます。法律の最終的な解釈と運用の可否は、施設の所在地を所管する保健所が判断します。
宿泊者名簿に載せる項目は条文でここまで決まっている
旅館業法6条1項は、営業者に宿泊者名簿を備えさせ、宿泊者の氏名、住所、連絡先その他の厚生労働省令で定める事項を記載させています。都道府県知事の要求があれば、名簿を提出しなければなりません。
省令側の項目は、施行規則4条の2第3項に並んでいます。
名簿に載せる項目の出どころ
法6条1項が直接定める項目
氏名、住所、連絡先の3つです。すべての宿泊者に必要です。
日本国内に住所を有しない外国人
上の3つに加えて、国籍と旅券番号を記載します。施行規則4条の2第3項1号の定めです。
都道府県知事が必要と認める事項
同項2号の定めです。自治体ごとに追加される可能性があるため、所管の保健所の案内を様式と並べて見ます。
点検の勘所は、旅券番号の対象を正しく読むことです。条文は「日本国内に住所を有しない外国人」と書いています。外国籍であれば全員に旅券番号が要る、という書き方ではありません。国内に住所のある外国人は、国籍と旅券番号の記載が省令の必須項目には入らない読み方になります。様式を作った時点で、この線引きを「外国人はすべて旅券番号」と丸めていないかが、最初に見るところです。
宿泊者の側にも義務があります。法6条2項は、営業者から請求があったとき、宿泊者が上の事項を告げなければならないと定めています。偽って告げた場合は、法12条で拘留または科料の対象です。名簿の記載を求める根拠が条文にある、という説明は、チェックインの場面で拒否されたときの足場になります。
保管は作成の日から3年 — 場所と起算の読み方
保存期間は施行規則4条の2第1項に書かれています。名簿は、正確な記載を確保するための措置を講じたうえで作成し、作成の日から3年間保存します。
場所は同条2項で2か所です。旅館業の施設か、営業者の事務所のどちらかに備えます。本社で一括管理し、施設には置かない運用でも、事務所に備えていれば条文の枠には入ります。
数え方は「宿泊日」ではなく「名簿の作成日」からです。連泊や長期滞在のように、宿泊日と名簿を作った日が違うケースでは、期限の起算点がずれます。Excelに「保存期限」の列があっても、宿泊日を基準に計算していると、短く見積もる方向にずれる可能性があります。期限の日の数え方(作成日の翌日から数えるか)までは条文に書かれていないので、運用メモに書くときは保健所に確かめた結果を添えます。
罰則も押さえておきます。法6条1項に違反して名簿を備えない、または記載しない場合、法11条で50万円以下の罰金の対象になります。
点検の前提 — Claudeでファイルを扱う設定と上限
Claudeにファイルを読ませて表を処理させる場合は、コード実行とファイル作成の機能を使います。Free、Pro、Maxの各プランは、設定の「Capabilities」でCode execution and file creationをオンにします。TeamとEnterpriseは、組織のオーナーが組織設定で管理します。
作れるファイルはExcel(.xlsx)、PowerPoint(.pptx)、Word(.docx)、PDFで、アップロードとダウンロードの上限は1ファイル30MBです。点検結果を.xlsxの指摘一覧にしてもらい、そのまま保存できます。この機能の利用は、通常のチャットより使用量上限を多く消費する点も、サポート記事に書かれています。
名簿の点検は、枚数が多くなりがちです。数百行のCSVなら、Claudeにコードで数えさせるほうが、文章で読ませるより抜けを見落としにくくなります。
手順1: 実データではなくダミーで試す
名簿には氏名、住所、連絡先、旅券番号が並びます。まずは実在しない人物のダミー行を数行作り、点検の型を完成させてから、運用に取り入れる範囲を決めます。
ダミーのCSV(meibo_sample.csv)は、列を次のように組みます。
| 列名 | 中身の例 |
|---|---|
| 名簿作成日 | 中身の例2026-04-02 |
| 氏名 | 中身の例宿泊 太郎 |
| 住所 | 中身の例東京都〇〇区… |
| 連絡先 | 中身の例090-0000-0000 |
| 区分 | 中身の例国内住所あり / 国内住所なし(外国人) |
| 国籍 | 中身の例国内住所なしの行だけ記入 |
| 旅券番号 | 中身の例国内住所なしの行だけ記入 |
わざと空欄の行、旅券番号だけ抜けた外国人の行、作成日が3年以上前の行を混ぜておきます。点検の手順が正しく動くか、期待どおりに指摘が出るかを確かめる材料になります。
手順2: 条文を渡して、コードで空欄と期限を数えさせる
Claudeには、条文の該当部分を貼ったうえで、判定ルールと出力の形を指定します。判定に関わる「日本国内に住所を有しない外国人」の線引きを、プロンプトの中で明示するのがコツです。
添付のCSVは旅館の宿泊者名簿です。次のルールで点検してください。
ルール1: すべての行で氏名・住所・連絡先が空でないこと。
ルール2: 区分が「国内住所なし(外国人)」の行は、国籍と旅券番号も空でないこと。
国内住所のある行に旅券番号がなくても指摘しないでください。
ルール3: 保存期限の目安は名簿作成日から3年後。期限を過ぎた行を別に挙げてください。
コードで全行を数え、行番号・問題の種類・該当列の一覧表にしてください。
条文にない基準は、推測で指摘に加えないでください。コードを書かせる場合の一例を示します。標準ライブラリだけで動くので、手元でも同じ判定を再現できます。
import csv
import datetime as dt
def add_years(d, years):
try:
return d.replace(year=d.year + years)
except ValueError: # 2月29日の翌年対策
return d.replace(year=d.year + years, day=28)
rows = list(csv.DictReader(open("meibo_sample.csv", encoding="utf-8-sig")))
today = dt.date.today()
for no, r in enumerate(rows, start=2): # 1行目は見出し
problems = []
for col in ["氏名", "住所", "連絡先"]:
if not (r.get(col) or "").strip():
problems.append(f"{col}が空")
if r.get("区分", "").startswith("国内住所なし"):
for col in ["国籍", "旅券番号"]:
if not (r.get(col) or "").strip():
problems.append(f"{col}が空(国内住所なしの外国人)")
created = dt.date.fromisoformat(r["名簿作成日"])
if add_years(created, 3) < today:
problems.append("作成日から3年を経過(廃棄前に保存要否を確認)")
if problems:
print(no, r.get("氏名"), "/".join(problems))保存期限の判定は、条文の「3年間」を作成日の3年後で近似した目安です。ぴったりの日の扱いは、保健所に確認してからコードの比較式(< か <=)を決めます。ここを決めずに「期限切れ」の一覧を廃棄の根拠にすると、早すぎる廃棄につながるため、一覧は確認の起点に留めます。
手順3: チェックイン用紙の様式を条文に突き合わせる
名簿の一覧だけでなく、宿泊者が書き込む用紙そのものも点検できます。PDFやWordの様式を添付し、次の観点で読ませます。
- 氏名・住所・連絡先の記入欄がそろっているか
- 外国人向けの欄に、国籍と旅券番号があるか
- 「日本国内に住所を有しない」ことを選べる欄や注記があるか
- 自治体が追加で求める項目(保健所の案内や条例で指定されたもの)を、別途貼り付けた資料と照らして不足がないか
3番目は見落としやすい観点です。旅券番号の欄が日本人にも一律で「必須」とされていると、宿泊者から不要な情報の提供を求める形になります。用紙の注意書きで、記入対象の外国人を正しく限定できているかも合わせて読ませます。
読ませた結果は、「欄ごとの有無」を表にまとめるよう指示します。チェックの根拠として、どの条文に基づく指摘なのかを列に入れさせると、後から保健所に相談するときの資料になります。
見落としやすいところ
落とし穴
宿泊者名簿は「民泊の届出」では別の法律の帳簿になる
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出の宿泊では、名簿の根拠は旅館業法ではありません。この記事の条文は旅館業法の許可を受けた営業向けです。住宅宿泊事業の名簿は、その法律の条文で別に点検します。許可の区分から整理したい場合は、簡易宿所の営業許可申請を下書きする手順が出発点になります。
ほかにも、運用で抜けやすい点があります。
- フロントを置かない施設: 施行規則4条の3は、フロントに代わる設備の基準として、宿泊者名簿の正確な記載を可能にする設備を備えることを求めています。無人チェックインなら、タブレットやテレビ電話でどう記載の正確さを担保しているかが、説明を求められる点です。
- 経過措置: 令和5年12月の旅館業法の改正に伴い、新しい6条は、施行日以後に宿泊を開始した人に適用されます。省令の附則では、施行日前から引き続き宿泊している人の名簿の記載事項は、従前の例によるとされています。古い様式の名簿を見直すときは、この附則で線を引きます。
- 宿泊拒否の記録: 附則の経過措置として、特定の理由で宿泊を拒んだときは、理由などを記録しておくよう定められています。名簿とは別の記録ですが、宿泊に関わる帳簿として、保管場所と期間の運用を名簿と並べて決めておくと整理しやすくなります。
Claudeに渡す情報の扱い
名簿の実データには、氏名、住所、旅券番号といった個人情報が含まれます。試す段階ではダミーを使い、実運用に入れる前に、施設の個人情報の取り扱い方針と、利用しているプランのデータの扱いを確認します。
個人向けのFree、Pro、Maxプランの会話は、モデル改善への利用を許可した場合などに学習に使われる、と説明されています。許可の有無は、プライバシー設定で変えられます。Incognitoチャットは、モデル改善の設定をオンにしていても学習に使われません。法人向けのプランは別の扱いなので、組織の契約内容と合わせて決めます。
もう一つの注意点は、ファイルに仕込まれた指示です。外部のファイルやサイトに紛れた指示でClaudeが意図しない動きをするおそれがある、とサポート記事は警告しています。点検には外部から取得した文書を混ぜず、宿泊者が書き込んだ自由記入欄の文章を、指示として扱わせないようにします。
運用メモに落とす
点検の結果は、保健所に説明できる運用メモにしておきます。メモには次の4点を書きます。
- 名簿の備え付け場所(施設か事務所か)
- 国内に住所がない外国人の判定方法と、旅券番号の記入手順
- 保存期限の起算日(作成日)と、廃棄前の確認の手順
- 自治体が追加で求める項目の有無
派遣先管理台帳のように、同じ「3年保存」の台帳でも点検の型は共通です。記載事項の表と、期限を数えるコードという組み合わせは、派遣先管理台帳の点検にも通じます。多言語の宿泊者向けに案内文を整える作業は、民泊の案内文を多言語化する手順の物件ルールPDFの使い方が参考になります。
まとめ
宿泊者名簿の点検は、氏名・住所・連絡先の3項目、国内に住所のない外国人の国籍と旅券番号、作成日から3年の保存という、条文で言い切れる部分から始めます。外国人の線引きと自治体の追加項目は、判断が割れやすい部分です。Claudeには条文の範囲だけを判定させ、線引きに迷う行は保健所への確認事項として残します。