Claudeで特定保健指導の面談記録と行動計画を下書きする手順 — 階層化は先に確定する
特定保健指導の初回面接メモから、支援計画と行動計画の下書きをClaudeに作らせる手順です。匿名化、階層化の先出し、2か月継続で評価できる行動目標、3か月後の実績評価欄の整え方を示します。
特定保健指導の面談記録は、初回面接の聞き取りメモを、支援計画と行動計画の形に直す仕事です。メモは話した順に並び、様式は欄で区切られています。この変換が、保健師や管理栄養士の面接後の時間を食います。ここをClaudeの下書きで補うなら、決めておくのは三つです。対象者の名前と番号は入力前に外す。階層化の区分は、Claudeに判断させず先に確定して渡す。行動目標は、3か月後に測れる形に直させる。
この記事は、その三つを指示文とチェック表に落とした手順です。基準は厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」に合わせています。入力が認められるかどうか、確認者を誰にするかといった組織側の線引きは看護記録に生成AIを使う看護師の線引きが参考になります。ここでは、入力が認められた前提で作業の中身に絞ります。
Claudeに任せる範囲と、任せない範囲
任せるのは、メモの整形です。聞き取った内容を欄に振り分ける、言い回しを揃える、抜けている欄を洗い出す。この三つなら、元のメモという根拠が手元に残ります。
任せないのは、判断が要る箇所です。プログラムは、初回面接、行動目標と支援計画の作成、保健指導の評価を、医師、保健師、管理栄養士が行うものと定めています。保健指導に関する一定の実務経験のある看護師も、令和11年度末まで行えます。つまり計画の中身を決めるのは人です。Claudeの出力は、その人が直す前の叩き台にとどまります。
| 作業 | Claudeに任せるか | 理由 |
|---|---|---|
| メモの欄への振り分け | Claudeに任せるか任せる | 理由元のメモと並べて照合できる |
| 行動目標の言い換え | Claudeに任せるか下書きまで | 理由対象者が選んだ目標かは面接した人しか分からない |
| 階層化の区分の決定 | Claudeに任せるか任せない | 理由保険者の基準と健診値で機械的に決まる |
| 実績評価の判定 | Claudeに任せるか任せない | 理由体重と腹囲の実測値で決まる |
入力前に、面談メモを匿名化して番号を振る
健診結果と保健指導の記録は個人情報です。プログラムは、管理方法を個人情報保護法と各ガイドラインに従って適切に扱うよう求めています。遠隔面接を行う場合も、交換される個人情報が漏れないよう、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した管理などの措置を求めています。
Claudeに貼る前に、次の処理を済ませます。
- 氏名、保険者番号、被保険者証の記号・番号、住所、勤務先名を消す
- 対象者を「対象者A」のような仮の記号に置き換える
- 年齢は年代のまま使い、生年月日は書かない
- メモの一行ごとに、[M1]、[M2]の番号を振る
番号は後で効きます。Claudeに出力の一文ごとに「元のメモのどの行か」を付けさせると、事実の拾い漏れと混入を目で追えるようになります。委託先に記録を預ける運用の場合は、個人情報の委託先監督をClaudeで点検表にする手順の考え方がそのまま使えます。
落とし穴
匿名化したつもりでも、特定できる情報が残る
氏名を消しても、職場の部署名、珍しい通院歴、家族構成の細かい記述が残ると、本人が分かる場合があります。メモに書かれた属性のうち、行動計画に要らないものは、貼る前に削ります。
階層化の区分は公式の基準で先に確定する
動機付け支援か積極的支援かは、面談前に決まっています。階層化は4つのステップで決まります。
階層化の判定の流れ
- 1
ステップ1 内臓脂肪蓄積のリスク
腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上なら(1)。それ以外でBMIが25以上なら(2)。
- 2
ステップ2 追加リスクを数える
血圧高値、脂質異常、血糖高値、喫煙の該当数を数えます。喫煙は、血圧・脂質・血糖のどれか1つ以上に該当する場合だけ数えます。
- 3
ステップ3 区分に分ける
次の表のとおり、(1)と(2)で区分の境目が違います。
- 4
ステップ4 例外を当てはめる
血圧・脂質・血糖の薬を服用中なら対象外です。65歳以上75歳未満は、積極的支援に当たっても動機付け支援になります。
ステップ3の区分は次のとおりです。
| 追加リスクの数 | 0 | 1 | 2 | 3以上 |
|---|---|---|---|---|
| (1)腹囲が基準以上 | 0情報提供 | 1動機付け支援 | 2積極的支援 | 3以上積極的支援 |
| (2)腹囲は基準未満でBMI25以上 | 0情報提供 | 1動機付け支援 | 2動機付け支援 | 3以上積極的支援 |
追加リスクの数値基準は、血圧が収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上、脂質が中性脂肪150mg/dl以上またはHDLコレステロール40mg/dl未満、血糖が空腹時血糖100mg/dl以上またはHbA1c(NGSP)5.6%以上です。空腹時血糖とHbA1cの両方があるときは、空腹時血糖の結果を優先して判定します。
この判定を保険者のシステムや健診機関の通知で確定済みなら、それを面談メモの先頭に貼るだけで足ります。手元で検算したいときは、Claudeに判定用のスクリプトを書かせる方法があります。判定そのものを文章で答えさせるより、コードに落として実行するほうが、同じ入力で同じ答えが返るためです。次は、上の基準をそのままコードにした例です。
def kaisouka(age, sex, waist, bmi, sbp, dbp, tg, hdl,
glucose, hba1c, smoking, on_meds):
"""特定保健指導の階層化。tg・glucose は空腹時の値を想定。"""
if on_meds:
return "対象外(血圧・脂質・血糖の薬を服用中)"
if waist >= (85 if sex == "M" else 90):
group = 1
elif bmi >= 25:
group = 2
else:
return "対象外(腹囲・BMIの基準未満)"
bp = sbp >= 130 or dbp >= 85
lipid = tg >= 150 or hdl < 40
# 空腹時血糖とHbA1cが両方あれば空腹時血糖を優先
sugar = glucose >= 100 if glucose is not None else hba1c >= 5.6
base = bp + lipid + sugar
risks = base + (1 if smoking and base >= 1 else 0)
if group == 1:
level = "積極的支援" if risks >= 2 else "動機付け支援" if risks == 1 else "情報提供"
else:
level = "積極的支援" if risks >= 3 else "動機付け支援" if risks >= 1 else "情報提供"
if level == "積極的支援" and 65 <= age < 75:
level = "動機付け支援"
return levelこのコードは、プログラムの階層化の記述を写した検算用です。随時採血の場合の基準値や、保険者独自の運用までは入れていません。実際の区分は、必ず保険者の判定と照らしてください。
初回面接の記録と行動計画を下書きさせる指示文
階層化が決まったら、面談メモを欄に振り分けさせます。動機付け支援と積極的支援では、初回面接の内容は共通です。積極的支援では、初回面接で特定保健指導の支援計画(様式2)を作る必要があります。
Claudeには、欄を固定した指示文を渡します。次は一例です。
あなたは、特定保健指導の面談記録を整える補助です。
次の面談メモ(各行に[M番号]付き)を、下の欄に振り分けてください。
【前提】
- 階層化の区分: 積極的支援(確定済み。変更しないこと)
- 対象者は「対象者A」と表記する
【出力する欄】
1. 生活習慣の振り返り(食生活・身体活動・喫煙・飲酒・睡眠)
2. 対象者が自分で選んだ行動目標
3. 行動計画(何を・いつ・どのくらい)
4. 評価時期と、対象者が自己評価する項目
5. 次回の支援で確認すること
【守ること】
- 各文の末尾に、根拠にしたメモの番号を[M3]のように付ける
- メモに無い内容は書かず、その欄に「メモに記載なし」と書く
- 行動目標は、対象者の発言にあるものだけを使う。提案は別枠の「保健指導者の提案候補」に分ける
- 体重と腹囲は必ず評価項目に入れる「対象者が選んだ目標」と「保健指導者の提案候補」を分けるのが要点です。プログラムは、対象者が自ら行動目標を設定できるよう支援することを求めています。Claudeが目標を足すと、対象者の目標のように見えてしまいます。分けておけば、面接した人が採否を決められます。
行動目標を、評価できる形に直させる
面談メモには「間食を減らしたい」「歩くようにする」といった言葉が並びがちです。このままでは、3か月後に達成したかどうかを決められません。プログラムは、生活習慣の行動変容を評価に使う場合、初回面接や中間評価で目標、評価方法、達成条件を対象者と共有しておくよう求めています。事前に設定した目標以外の行動変容は、ポイントに算定できません。
行動目標の言い換え
メモのままの目標
甘い飲み物を控える。もう少し歩く。
評価できる形の下書き
加糖コーヒーを週5回から週1回に減らす。通勤で1駅分を週3日歩く。どちらも2か月続ける。
言い換えの基準は、プログラムの表6にあります。行動変容の目標例として、間食を適量にする、甘い飲み物を飲まない(または回数を減らす)、軽く汗をかく運動を週に数日に増やす、といった、数や頻度を入れる形が並んでいます。また、対象者が2か月間行動変容を継続することで、腹囲1.0cm以上かつ体重1.0kg以上の減少と同程度の効果が期待されるよう、目標を設定する必要があるとされています。
Claudeには、次のように頼みます。
上の「対象者が選んだ行動目標」を、次の条件で書き直してください。
- 回数・量・期間を数字で入れる(数字が不明なら「要確認:〇回」と空欄にする)
- 2か月続けられる内容にする
- 元の発言から意味を変えない
- 書き直した文の横に、元の発言の[M番号]を残す数字が不明な箇所を「要確認」で残させるのが狙いです。Claudeが「週3回」と適当に補うと、対象者が言っていない数字が計画に入ります。
3か月後の実績評価に向けて、記録欄を整える
積極的支援では、アウトカム評価とプロセス評価の合計が180p以上になることが、保健指導終了の条件です。令和6年度版では、評価の考え方が変わっています。
積極的支援のポイントの考え方
終了の条件
180p以上
アウトカム評価とプロセス評価の合計
腹囲2cm以上かつ体重2kg以上減
180p
実績評価の時点で達成していれば
腹囲1cmかつ体重1kg減
20p
2cm・2kgの過程として評価
行動変容の継続
2か月以上
実績評価の時点で継続していれば評価
古い平成30年度版を見ていると、ここで食い違います。平成30年度版では、継続的な支援を支援Aと支援Bのポイント制とし、支援Aのみで180ポイント以上、または支援Aが160ポイント以上で支援Bと合わせて180ポイント以上、という書き方でした。令和6年度版にはアウトカム評価の記述が加わり、腹囲2cm以上かつ体重2kg以上減が180pに当たります。参照する版を取り違えると、記録欄の設計が変わります。Claudeに資料を渡すときも、令和6年度版の該当箇所だけを渡します。
実績評価の記録欄には、次の項目を用意しておくと、評価時に迷いません。
- 実績評価時の体重と腹囲(初回面接時の値と並べる。体重と腹囲は必須の評価項目)
- 行動目標ごとの継続期間(2か月以上かどうか)
- 目標を途中で変えた場合は、変更した日付(変更後2か月の継続で評価できる)
- 達成に至らなかった場合に、今後どうしたいかと、悪化しそうな場面への対応策
- 翌年の階層化で再び対象になり得ることを、本人に伝えたかどうか
最後の項目は、見落としやすい点です。プログラムは、2cm・2kg減の達成状況にかかわらず、翌年の階層化で再び支援の対象になり得る人には、その可能性をあらかじめ説明するよう求めています。血圧、血糖、脂質への効果には個人差があり、継続が大切だという説明も同じ箇所にあります。
下書きを元のメモと突き合わせる点検項目
出力を記録に移す前に、面接した人が次を確認します。
| 点検項目 | 見るところ |
|---|---|
| 根拠の番号 | 見るところ出力の各文に[M番号]があり、その行に書いてあるか |
| 対象者の発言 | 見るところ行動目標が、対象者が選んだものだけか |
| 数字 | 見るところ回数・量・期間が、メモにある数字と一致するか |
| 階層化の区分 | 見るところ渡した区分のまま書き換わっていないか |
| 評価項目 | 見るところ体重と腹囲が入っているか |
| 提案候補 | 見るところ保健指導者の提案が、対象者の目標に混ざっていないか |
| 匿名化 | 見るところ出力に氏名や番号が再び入っていないか |
番号が付いていない文は、根拠のない文として扱います。メモに無い内容を足していないかを、番号の有無だけで一次判定できます。
同じ型の「事実と所見を分ける」手順は、Claudeで個別支援計画の原案を整える手順でも使っています。栄養面の記録は栄養ケア計画書と栄養マネジメントの記録を介護でClaudeに下書きさせる手順に近い形です。
指示文をProjectsに固定する
毎回、指示文を貼り直すと、欄の名前や守ることが少しずつ変わります。Claudeのプロジェクト機能には、プロジェクトごとの指示(project instructions)と、資料を置くナレッジがあります。指示は、Claudeの応答を調整するためのものです。
固定するものは三つです。
- 出力する欄と、「メモに記載なし」と書くルール
- 根拠の番号を付ける規則
- 階層化の区分は与えられたものを変えないという規則
ナレッジには、令和6年度版プログラムの動機付け支援・積極的支援の節だけを置きます。個人の面談メモは、ナレッジに置かず、会話ごとに匿名化して貼ります。プロジェクトを組織内で共有できるのは、TeamとEnterpriseのプランです。共有範囲に、面談メモが含まれないようにします。
使えない場面と、先に決めておくこと
次の場面では、Claudeの下書きを使う前に、決めることが残ります。
- 入力の可否が決まっていない。組織の規程で、健診結果や保健指導の記録を外部のサービスに入力してよいかを先に決めます
- 実施者の要件を満たさない人が確認者になる。初回面接、計画、評価は、医師、保健師、管理栄養士(経過措置の看護師を含む)が担います
- 遠隔面接の録音や画面を、そのまま貼ろうとしている。ビデオ通話上で健診結果などの個人情報を画面に映す際の留意点が、プログラムに別途あります
- 保険者や委託元が指定する様式がある。指示文の欄は、指定様式の項目に合わせて作り直します
Claudeの下書きは、面接した人の記憶が新しいうちに、確認と修正をするために使います。出力を後日まとめて処理すると、元のメモとの照合が難しくなります。
まとめ
特定保健指導の面談記録では、階層化と行動目標の決定が人の仕事で、メモの整形がClaudeの仕事です。入力前の匿名化とメモの行番号、与えた区分を変えない規則、数字が不明なら空欄で残す規則の三つが、下書きの信頼度を左右します。参照する資料は、評価の考え方が変わった令和6年度版にそろえます。