Claudeでリハビリテーション総合実施計画書を下書きする手順 — 評価結果の事実から目標欄を起こす
療法士の評価結果を番号つきでそろえ、Projectsの指示文で総合実施計画書の評価欄・短期目標・具体的アプローチの案をClaudeに下書きさせる手順です。目標の時期と採否は療法士と医師が決めます。
リハビリテーション総合実施計画書は、評価の結果から目標を立て、目標ごとに具体的なアプローチを書き、本人と家族に説明するための様式です。評価は手元のカルテや評価用紙にそろっていても、それを様式の欄に割り付けて文にする作業が、カンファレンスの前に重なります。
ここにClaudeを使うなら、任せる範囲を先に決めます。評価結果の事実を欄ごとに並べ、目標とアプローチの案を出すところまでは任せる。目標の時期、目標の採否、本人・家族の希望の読み取りは、療法士と医師が決める。この線を、指示文と出力の欄立てで仕組みにするのが、この記事の手順です。
入力してよい情報の範囲は、施設の規程と契約形態で決まります。判断の材料は看護記録に生成AIを使う看護師の線引きにあります。ここでは、匿名化したうえで入力が認められている前提で作業の中身を扱います。
様式は4種類ある — 先にどれを使うかを決める
厚生労働省の様式集には、リハビリテーション総合実施計画書として別紙様式23、23の2、23の3、23の4が並んでいます。欄の構成が違うので、指示文に入れる見出しも様式ごとに作り直します。
| 様式 | 欄立ての特徴 |
|---|---|
| 別紙様式23 | 欄立ての特徴評価項目の欄、ADLの「している活動」と「できる活動」、基本方針、目標と具体的アプローチを分けた構成 |
| 別紙様式23の2 | 欄立ての特徴評価項目ごとに「短期目標(○ヶ月後)」と「具体的アプローチ」の列を持つ構成。ADLはBarthel Indexの項目で並ぶ |
| 別紙様式23の3 | 欄立ての特徴原発巣・病期分類・骨転移の欄を持ち、目標は「2週間後」で立てる構成 |
| 別紙様式23の4 | 欄立ての特徴冠危険因子・運動耐容能・運動処方の欄を持ち、評価日に「回目・ヶ月目」を書く構成 |
自施設で使っている版が手元の様式と違うことがあるので、見出しを写す元は、いま実際に記入している様式にします。この記事の例は、評価と目標が1行に並ぶ別紙様式23の2で組みます。
様式の末尾には記入上の注意があり、そこにClaudeが勝手に埋められない条件が書かれています。別紙様式23の2では、日常生活自立度は通知で定められたランクに該当するものであること、ADLの評価はBarthel IndexのかわりにFIMを用いてもよいこと、が注意として載っています。回復期リハビリテーション病棟入院料1を算定する場合は、栄養欄を必ず記入し、シート上段に管理栄養士の氏名も書くとあります。
欄を、評価から埋まるものと判断で書くものに割る
様式の欄は、記録から写せるものと、人が決めるものに分かれます。Claudeに触らせる範囲は、前者と、後者の「案」までです。
Claudeに任せる欄と、人が書く欄
評価から並べる欄
心身機能・構造の評価項目(関節可動域制限、筋力低下、疼痛など)、基本動作、ADLの各項目、栄養・環境などの記載事実。評価メモにある数値と所見を、欄に割り付けます。
判断で書く欄
短期目標の時期と水準、リハビリテーションの治療方針、退院時の目標と見込み時期、本人・家族の希望、説明と署名。Claudeは案か、元の発言の整理までにとどめます。
分かれ目になるのは「本人の希望」「家族の希望」の欄です。ここは評価ではなく、面談で聞き取った言葉を書く欄です。Claudeに推測させず、聞き取りメモの文言をそのまま貼って、欄の長さに合わせて切り詰めさせる使い方に限ります。
評価メモを、番号つきの1枚にそろえる
Claudeに渡す前に、評価結果を1枚にそろえます。やることは2つです。個人が特定される情報を記号に置き換えることと、各項目に番号を付けることです。
氏名・生年月日・住所・家族の氏名・病院名は、入力前に記号へ置き換えます。発症日や手術日は「発症から○週」のように相対表記にします。置き換えの考え方は介護記録の日次メモを要約し申し送りにする手順の匿名化の節がそのまま使えます。Claudeのサポート記事も、健康記録や医療情報のような機微な個人情報は、入力に慎重になるよう案内しています。
番号は、出力の各文に根拠を結びつけるために使います。評価メモの例を次に示します。数値と所見は架空のものです。
対象: 患者A(匿名化済み) 発症から5週 評価日: 相対表記
[E1] 右肩関節 屈曲 自動90度・他動120度。挙上時にNRS 5
[E2] 右中殿筋 MMT 3
[E3] 起き上がり 一部介助。立位 つかまり。訓練室歩行は杖と短下肢装具で見守り
[E4] BI 食事10 移乗10 整容5 トイレ動作5 入浴0 平地歩行10
階段0 更衣5 排便管理10 排尿管理10
[E5] 病棟での実行状況: 車椅子で病棟トイレへ移動、乗り移りは見守り
[E6] 本人の発言(面談メモより): 「また自分で歩いて買い物に行きたい」様式の項目に沿った並びにしておくと、あとで欄との対応が取りやすくなります。ここで大事なのは、評価の書き方を変えないことです。「できる」と「している」の区別は様式の注意にも出てくるので、訓練時の能力と病棟での実行状況は別の行にします。上の例のE3とE5がその区別です。
Projectsに様式の見出しと指示文を置く
毎回、指示を貼り直すと、貼り忘れや書き換えが起きます。Claudeのプロジェクトは、プロジェクト内のすべてのチャットに効く指示(project instructions)を保存でき、ファイルを知識として置けます。
総合実施計画書の下書き専用に1つプロジェクトを作り、次の2つを置きます。
プロジェクトに置くもの
知識(ファイル)
記入する様式の見出しだけを写したテキスト。患者の情報が入った計画書や評価結果は置きません。
指示文
欄の固定、番号の付け方、判断を書かせない規則、要確認の出し方をまとめた指示です。次に例を載せます。
指示文の例
あなたはリハビリテーション総合実施計画書(別紙様式23の2)の
下書きを作る補助です。貼られる評価メモは匿名化済みで、
各項目に [E数字] の番号があります。
出力は、評価項目ごとに次の4列の表にします。
評価の事実 / 短期目標の案 / 具体的アプローチの案 / 根拠番号
守ること:
- 「評価の事実」は評価メモの数値と所見をそのまま写す。
言い換え、平均、合計の計算をしない
- 「短期目標の案」に時期(○ヶ月後)を書かない。時期の欄は空にする
- 目標とアプローチは、評価メモの項目から直接導けるものに限る。
評価にない機能を想定して目標を立てない
- 疾患名の推定、予後の予測、禁忌や中止基準を書かない
- 本人・家族の希望は、メモの発言を一字一句変えずに貼る
- 評価メモにない項目、食い違う項目は表に入れず、
末尾の【要確認】に番号つきで挙げる
- 栄養、第三者の不利、環境の欄は、メモに記載がなければ「記載なし」とする効いているのは、時期を空にする行と、評価にない機能を想定させない行です。時期を指定しないと、「3か月後に杖歩行自立」のような、評価メモにない時期と水準が目標に入り込む余地ができます。時期と水準は、医師を含むカンファレンスで決める部分なので、指示文の側で書けない形にしておきます。
出力は、事実・案・要確認の3つに分けて受け取る
評価メモを貼ると、次のような形で返ってくるように指示文を組んでいます。以下は、指示文に沿って期待する出力の形の例示です。Claudeの実際の出力そのものではありません。
| 評価の事実 | 短期目標の案 | 具体的アプローチの案 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 右肩関節屈曲 自動90度・他動120度、挙上時NRS 5 | (時期は空欄) 疼痛を抑えて挙上域を広げる | 疼痛の出ない範囲での他動・自動介助運動 | E1 |
| 右中殿筋 MMT 3 | (時期は空欄) 立位での骨盤保持を安定させる | 中殿筋の筋力増強、立位保持練習 | E2,E3 |
| 訓練室歩行 杖と短下肢装具で見守り | (時期は空欄) 見守りなしでの歩行 | 装具・杖歩行の反復練習 | E3 |
【要確認】
- E5は病棟での実行状況だが、訓練時の能力との差を示す記載が
評価メモにない(ADLの「している活動」欄の根拠が不足)この形にしておくと、療法士が見る順番が決まります。まず「評価の事実」の列を評価メモと照合します。次に目標の案を、自分の臨床判断で採るか直すか決めます。最後に【要確認】の項目を、評価をやり直すか空欄で残すか判断します。
アプローチの案は、療法士が普段書いている言い回しとずれることがあります。施設で使っている言い回しの短い見本を、指示文の末尾に3〜4行足しておくと、文体がそろいます。
本人・家族への説明の前に、点検する
様式には、本人・家族への説明の日付と、説明者の署名の欄があります。署名と説明は、下書きとは別の行為です。Claudeに任せるのは、確定した目標を説明用の平易な言葉に書き直すところまでです。
別紙様式23の5の「目標設定等支援・管理シート」は、記載上の注意で、リハビリテーション実施計画書または総合実施計画書の交付・説明と一体として行って差し支えないとされています。同時に説明する運用の施設では、23の5の「今後の見通し」も同じ手順で下書きできますが、ここには医師の説明内容と患者の受け止めを書く欄があります。この2つは面談の事実なので、Claudeには聞き取りメモの整理だけを頼みます。
下書きを採用する前の点検表を示します。
- 評価の事実の列が、評価メモの数値と所見に一致している
- BI(Barthel Index)の合計は、項目点を自分で足して様式の合計欄と照合した
- 短期目標の時期の欄が、カンファレンスで決めた内容になっている
- 本人・家族の希望の欄が、面談メモの言葉のままである
- 【要確認】に挙がった項目を、評価の追加か空欄で処理した
- 栄養欄は、回復期リハビリテーション病棟入院料1の算定に当たる場合、管理栄養士の評価を反映している
- 活動度やリスクの欄(別紙様式23の2は「活動度」、別紙様式23は「リスク・疾病管理」)は、医師の指示を写した
合計の足し算をClaudeに頼まないのは、評価メモの数値を様式の合計欄に写すとき、写し間違いを検算で見つけるためです。計算を任せると、検算の意味がなくなります。
使えない場面と、先に決めておくこと
次の場面では、この手順はそのままでは使えません。
- 匿名化が追いつかない。自由記述が多く、特定につながる記載を確認しきれない
- 施設が、患者の評価結果を外部の生成AIサービスへ入力することを認めていない
- 評価が未完了で、数値が欄の半分も埋まっていない。Claudeは空欄を想像で埋めやすくなる
- 目標の根拠が、評価メモにない臨床判断(予後、禁忌、医師の指示)に依存している
入力できる情報の範囲と契約形態の関係は、ClaudeのBAAと3省2ガイドラインの要件で項目ごとに整理しています。看護側で同じ型を使う手順は、訪問看護報告書の下書きと退院時の看護サマリーの下書きにあります。事実と所見を分ける考え方は、どちらも共通です。
まとめ
総合実施計画書の下書きで効くのは、Claudeの文章力ではなく、任せる欄と任せない欄の線引きです。評価の事実は番号つきで渡して写させ、目標の時期と本人・家族の希望は空欄か原文のままにする。そのうえで、評価にない項目は【要確認】に出させる。この3点を指示文に入れておけば、カンファレンスに持ち込む下書きの確認は、療法士が評価メモと表を見比べる作業に収まります。