Claudeで契約概要・注意喚起情報の項目漏れを探す手順 — 監督指針の項目表と突合
保険会社のパンフレットPDFを監督指針の項目表と突き合わせ、契約概要と注意喚起情報の記載漏れ候補をClaudeに洗わせる手順です。判定欄の設計と人が確かめる箇所を示します。
契約概要と注意喚起情報の項目漏れは、監督指針の項目表をチェックリストにして、パンフレットPDFと1項目ずつ突き合わせる使い方で洗えます。Claudeに任せるのは「その項目に当たる記述が資料のどこにあるか」を引用付きで探す作業までです。記載が十分かどうかの判断は、募集管理や商品審査を担う人の仕事のまま残ります。
この記事では、金融庁の保険会社向けの総合的な監督指針が挙げる項目を軸に、Claudeへ渡す素材、指示文、出力の形、人が確認する箇所を順に示します。意向把握書面の下書きはClaudeで保険の意向把握・意向確認書面を下書きする手順が扱っていて、ここで対象にするのは、完成した説明資料の側の点検です。
監督指針は契約概要と注意喚起情報に何を求めているか
突合の物差しは、監督指針の「保険契約の募集上の留意点」にある情報提供義務の項目です。そこでは、書面の交付またはこれに代替する電磁的方法で情報を提供するとき、顧客が商品内容を理解するのに必要な情報を「契約概要」、顧客に注意を促すべき情報を「注意喚起情報」として、それぞれ記載しているかが確認事項になっています。
項目は「主なもの」として列挙されています。契約概要は10項目、注意喚起情報は11項目です。
契約概要と注意喚起情報の違い
契約概要
商品の仕組み、保障の内容、保険期間、保険料など、商品を理解するための情報です。
注意喚起情報
クーリング・オフ、告知義務、免責事由、解約、セーフティネットなど、不利益になりうる点を知らせる情報です。
契約概要の項目
| 項目 | 監督指針の記載の要点 |
|---|---|
| 契約概要であることの表示 | 監督指針の記載の要点当該情報が「契約概要」であること |
| 商品の仕組み | 監督指針の記載の要点— |
| 保障(補償)の内容 | 監督指針の記載の要点支払事由、支払事由に該当しない場合、免責事由など支払わない場合の主なもの。通例でないときは特に記載 |
| 付加できる主な特約 | 監督指針の記載の要点特約の概要を含む |
| 保険期間 | 監督指針の記載の要点— |
| 引受条件 | 監督指針の記載の要点保険金額など |
| 保険料に関する事項 | 監督指針の記載の要点— |
| 保険料払込みに関する事項 | 監督指針の記載の要点払込方法、払込期間 |
| 配当金に関する事項 | 監督指針の記載の要点配当金の有無、配当方法、決定方法 |
| 解約返戻金等 | 監督指針の記載の要点有無とそれに関する事項 |
注意喚起情報の項目
| 項目 | 監督指針の記載の要点 |
|---|---|
| 注意喚起情報であることの表示 | 監督指針の記載の要点当該情報が「注意喚起情報」であること |
| クーリング・オフ | 監督指針の記載の要点保険契約の申込みの撤回等 |
| 告知義務等の内容 | 監督指針の記載の要点危険増加で保険料を増額しても契約を続けられない場合があるときは、その場合を記載 |
| 責任開始期 | 監督指針の記載の要点— |
| 保険金等を支払わない場合 | 監督指針の記載の要点支払事由に該当しない場合と免責事由等のうち主なもの。通例でないときは特に記載 |
| 保険料の払込猶予期間、失効、復活等 | 監督指針の記載の要点保険料の自動振替貸付の仕組みがある商品は、その説明を含む |
| 解約と解約返戻金の有無 | 監督指針の記載の要点— |
| セーフティネット | 監督指針の記載の要点— |
| 指定ADR機関 | 監督指針の記載の要点商号または名称。存在しない場合は苦情処理措置と紛争解決措置の内容 |
| 補償重複 | 監督指針の記載の要点同種の補償が他にあると重複しうること、重複時の保険金支払の注意、主な事例 |
| 法令等で注意喚起することとされている事項 | 監督指針の記載の要点— |
「補償重複」は、複数の損害保険契約で同一の被保険利益に同種の補償が並ぶ状態を指す用語として定義されています。生命保険の資料では該当しない項目になりうるので、後で述べる判定欄に「対象外」を用意しておきます。
項目表を読むときに外せない3つの前提
この表をそのままチェックリストにする前に、監督指針の注記を3点押さえます。
1つ目は、契約概要と注意喚起情報を同一媒体で一体にして記載する場合の扱いです。このとき両者の「であることの表示」は省略でき、まとめて「契約情報」として表示すれば足りるとされています。パンフレットの見出しが「契約情報」になっていれば、表示項目が無いことは漏れになりません。
2つ目は、特定保険契約の扱いです。投資性の商品に当たるこの契約には保険業法第294条第1項が適用されず、準用される金融商品取引法の定める、契約前に交付する書面を用意する枠組みになります。変額保険のような商品の資料を点検するときは、上の2表だけで足りません。契約前に交付する書面の項目は別に設けられているため、チェックリストを分けて作ります。
3つ目は、この列挙が「主な項目」だということです。個別の商品で法令等が別の事項を求めていれば、「法令等で注意喚起することとされている事項」の項目で受けることになります。Claudeが「全項目に該当あり」と返しても、商品固有の法令事項が揃っている保証にはなりません。
手順1: チェックリストと資料を揃える
渡す素材は2つです。1つは上の2表を貼り付けたテキスト、もう1つは点検したい資料のPDFです。項目表は、監督指針の該当箇所から自分で抜き出して持っておきます。Claudeの記憶に頼らず、毎回同じ表を貼ると、項目の増減が出ません。
資料は、保険会社が公表しているパンフレットやご契約のしおりが向いています。顧客の氏名や証券番号が入った書類は、この作業に使いません。公開資料だけで足りる作業ですし、個人情報の入力が絡む場合の確認先はClaudeに個人情報を入力する前に確認する一次資料にまとめられています。
PDFを渡す前に、サイズとページ数を見ます。Claude APIのPDF対応では、1リクエストの最大サイズは32MB、最大ページ数は600ページ(コンテキストウィンドウが1Mトークン未満のリクエストでは100ページ)です。文字が細かい資料や表の多い資料は、上限のページ数に届く前にコンテキストを使い切ることがあるため、分割が勧められています。分厚い約款は、契約概要・注意喚起情報の載っているパンフレット部分と分けて渡すほうが、探す範囲も狭まります。
パスワードや暗号化のかかったPDFは扱えません。パスワード付きの資料は、先にかかっていない状態で入手するか、該当ページだけを別のPDFに書き出して渡します。
手順2: 指示文で判定の形を固定する
出力は表にします。項目ごとに、見つかった場所、原文の引用、判定の3列です。判定を自由記述にすると基準が揺れるので、選択肢を先に決めます。
添付PDFは、保険会社が顧客向けに作った商品説明資料です。
次の項目表(契約概要・注意喚起情報)を物差しにして、
資料に各項目に当たる記述があるかを調べてください。
ルール:
- 判断の根拠は、添付PDFの記載だけにしてください。一般的な保険の知識で補わないでください。
- 項目ごとに、ページ番号、原文の引用(そのまま・短く)、判定を表で出してください。
- 判定は「記載あり」「一部のみ」「記載なし」「対象外」「判断できない」から選んでください。
- 「記載なし」と「判断できない」を区別してください。読み取れない図表・画像は「判断できない」にします。
- 「対象外」にするときは、その商品に当たらない理由を一言添えてください。
- 通例でない免責事由が資料に出ているときは、項目表の「通例でないときは特に記載」に当たるかを別欄で挙げてください。
項目表:
(ここに契約概要・注意喚起情報の表を貼る)「判断できない」を独立した選択肢にしておくのが要点です。スキャン画像の資料や、図表に入った注記は、文字として拾えないことがあります。選択肢が「あり」と「なし」の2つだけだと、読み取れなかった箇所が「記載なし」に化けて、漏れでない箇所を漏れとして報告してしまいます。
手順3: 出力された表を、原文に当たって確かめる
返ってきた表は、そのまま採用しません。人が確かめる箇所は次の4つです。
表を受け取ってから人が確かめる4か所
- 「記載あり」の引用が、PDFの該当ページの文言と一致しているか
- 「記載なし」の項目を、PDFを開いて目視で探し直したか
- 「一部のみ」の不足分が、監督指針の注記(通例でない場合の特記など)に当たるか
- 「対象外」の理由が、その商品の種類と合っているか
優先順位は、「記載なし」の再確認が最初です。ここが漏れの候補そのもので、同時に誤判定の候補でもあります。見出しの文言が項目名と違うだけで、内容は載っていることがあります。たとえば「ご契約を解約されるとき」という見出しの下に、解約と解約返戻金の説明が収まっている形です。
「記載あり」の引用は、一致の確認を飛ばさないでください。要約を引用のように見せた出力が混じると、原文に無い言い回しで「ある」と判定された項目が見逃されます。引用は短く、そのままと指示してあるので、PDF内を文字列検索して見つかるかどうかで機械的に確かめられます。
手順4: 資料同士の整合を見る
漏れの確認とは別に、書面同士の食い違いも見られます。監督指針は、広告などの表示の審査で、約款、契約概要、注意喚起情報、パンフレット、ご契約のしおりなどの表示内容の整合性を確保するチェックを行っているか、という観点を挙げています。
次の指示文を、手順2の表が出たあとの2ターン目に使います。
次の2点を、添付PDFの記載だけから調べてください。
1. 保険期間・保険料払込期間・免責事由の記述が、
資料内の複数の箇所で食い違っていないか。
2. 食い違いがある場合は、該当する2つの箇所を引用で並べてください。
食い違いが見つからなければ、見つからなかったと答えてください。食い違いの有無は、約款本文まで渡して初めて判定できる場合もあります。パンフレットだけを渡したときの「見つからなかった」は、パンフレットの内部に限った結果です。約款との整合を見たい場合は、約款の該当条文を抜き出して追加で渡します。
代理店が作る比較表は、別の確認項目がある
保険代理店が自社で比較資料を作る場合には、監督指針に別の記載があります。契約概要を用いた比較表示を行うときは、次の趣旨の注意喚起文言が書かれているかを確かめる項目です。
- 比較表には保険商品の内容の全てが載っているわけではなく、参考情報として使うこと
- 比較表に記載された内容は、必ず契約概要やパンフレットで全般的に確認すること
あわせて、比較の対象にした全商品について、顧客が希望したときに契約概要を速やかに入手できる措置が取られているかも確認項目になっています。保険料だけに注目させないよう、保障内容など他の要素も含めて検討するよう促す文言も、あわせて記載することが適当とされています。
この3点は、手順2の項目表に追加の行として貼れば、同じ形で突合できます。自動車保険の見積書を並べて比べる作業はClaudeで自動車保険の見積書PDFを比較するに手順があります。比較資料を作る側が、この確認項目を満たすかどうかを見る場面と、使い分けてください。
この突合で分かること、分からないこと
分かるのは、項目に当たる記述がPDFのどこにあるか、あるいは見当たらないか、という形式面です。分からないのは次の3点です。
- 記載内容が正確かどうか。免責事由の一覧が約款と合っているかは、約款の側を渡さなければ判定できません
- 記載が顧客に分かりやすいかどうか。項目があっても、専門用語だけで書かれていれば、実質的には伝わっていない場合があります
- 法令上の適否。監督指針は項目を列挙していますが、個別の資料が基準を満たすかの結論は、コンプライアンス部門や保険会社の判断になります
この線引きを先に決めておくと、結果の読み方がぶれません。Claudeの表は「確認の順番を決める下ごしらえ」として使い、承認の根拠にはしません。医療保険の証券を読ませる使い方との違いは、Claudeに医療保険証券を読ませて保障内容を見直すにあります。そちらは契約者の立場で自分の保障を読む作業で、この記事は説明資料を作る側の点検です。
運用に載せる手順
同じ点検を繰り返すなら、項目表と指示文を固定して使い回します。Claudeのプロジェクト機能にチェックリストを置いておくと、会話のたびに貼り直す必要がありません。監督指針は改正されることがあるため、項目表の冒頭には、どの時点の監督指針から抜き出したかを書いておきます。更新の有無は、金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」のページで確かめられます。
最初の1回は、すでに公開されている別の保険会社のパンフレットで試すと、判定欄の使われ方が分かります。「判断できない」が多く出る資料は、画像の多いPDFかスキャン書類です。その場合は、文字を選択できる版の資料を探すか、該当ページの本文をテキストにして渡す手もあります。
まとめ
契約概要と注意喚起情報の項目漏れ探しでは、監督指針の項目表をチェックリストにし、資料PDFとの突合をClaudeに任せます。頼る相手は「探す作業」で、判断の担い手は人です。
効果が出るのは、判定を5つの選択肢に絞り、引用を原文と照らして確かめる運用にしたときです。「記載なし」の再確認と、「判断できない」の分離を省くと、漏れの報告に誤りが混ざります。まず1商品のパンフレットで、「記載なし」と出た項目が実際に無いのか、見出しの違いだけなのかを数えてください。その比率が、この突合をどこまで任せられるかの目安になります。