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広報紙をやさしい日本語に直す手順 — Claudeで数字を崩さず校正

広報紙をやさしい日本語に直す手順 — Claudeで数字を崩さず校正

自治体の広報紙や通知文を、国のガイドラインに沿ってやさしい日本語へ。用字用語集をClaudeのProjectsに置く方法と、日付・金額・窓口の数字を崩さない照合手順をまとめます。

広報紙の原稿をやさしい日本語に直す作業は、Claudeに向いた書き換えです。ただし書き換えの途中で、日付や金額、窓口の電話番号が少しでも動けば、住民への案内として使えなくなります。この記事では、自治体の用字用語集をClaudeのProjectsに置き、国のガイドラインに沿って書き換え、数字が動いていないかを機械的に照合するところまでを順に説明します。

広報紙のやさしい日本語化で、Claudeに任せる範囲

やさしい日本語とは、日本語が母語でない人にも伝わるように、言葉や文を平易に整えた日本語です。文化庁と入管庁(出入国と在留を担う国の機関)が2020年8月に公表した「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」は、作り方を3つのステップで示しています。

手順

ガイドラインが示す作り方の3段階

  1. 1

    日本人にわかりやすい文章にする

    情報を整理し、一文を短くし、外来語を減らします。

  2. 2

    外国人にもわかりやすくする

    二重否定や受身形を避け、和語を使い、漢字にふりがなをつけます。

  3. 3

    伝わるかを確認する

    日本語教師や外国人に、書き換え案を読んでもらいます。

Claudeが力を発揮するのは、1段階目と2段階目の書き換え案づくりです。3段階目の「伝わるかの確認」は人が担います。ガイドライン自体が、日本語教師や外国人による確認を作り方の一部に入れているためです。分担は次の形になります。

  • 書き換え案の作成、表記の統一、規則への適合チェックは、Claudeに任せられる
  • 数字と固有名詞の最終照合、公開してよいかの判断は、広報担当が行う
  • 伝わるかの確認は、日本語教師や外国籍の住民に依頼する

国のガイドラインを、Claudeへの指示文に落とす

ガイドラインの規則は、そのままClaudeへの指示にできます。規則を指示文にまとめておけば、原稿を貼るたびに同じ基準で書き換えが走ります。主な規則と、広報紙での使いどころは次のとおりです。

ガイドラインの規則広報紙での書き換え例
一文に言いたいことは1つだけ広報紙での書き換え例「届出をし、受理されると成立します」を2文に分ける
3つ以上のことは箇条書きにする広報紙での書き換え例申込方法を「窓口」「ホームページ」「電話」の3項目にする
外来語はできる限り使わない広報紙での書き換え例「コンセンサス」を「合意」にする
二重否定を使わない広報紙での書き換え例「在留カード以外は必要ありません」を「在留カードを持ってきてください」にする
受身形・使役表現を避ける広報紙での書き換え例行動する人が分かる文にする
文末は「です」「ます」で統一する広報紙での書き換え例尊敬語・謙譲語は使わず、丁寧語だけにする
曖昧な表現を避ける広報紙での書き換え例「9時ごろ」を「午前8時30分から午前9時30分まで」にする
西暦を使い、午前・午後を明記する広報紙での書き換え例元号を使わず、「2020年6月4日」「午前9時」と書く
「年度」は初出で説明する広報紙での書き換え例「2027年度」を「2027年度(2027年4月1日から2028年3月31日まで)」にする

最後の3行は、日付や時刻を載せる広報紙の原稿にそのまま当てはまります。元号は西暦に、「ごろ」「くらい」「なるべく」は具体的な時間や条件に書き直します。「年度」は、税や保険の通知にもよく出る言葉です。ガイドラインは、できる限り「○○年○月○日から△△年△月△日まで」と具体的に書くよう求め、「年度」を使う必要があるときは、最初に出てきたところで説明するとしています。

ガイドラインには、言い換えが難しい重要語の扱いもあります。災害用語や暗証番号のような知っておきたい言葉は、そのまま使って、後ろに説明を足します。たとえば「余震<=後から来る地震>」の形です。

指示文の例

次の指示文は、上の規則をまとめた例です。自治体の事情に合わせて書き換えてください。

あなたは自治体の広報担当を補助する校正者です。
貼られた原稿を、「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」に沿って
やさしい日本語に書き換えます。
 
守ること
- 一文に言いたいことは1つ。3つ以上の並列は箇条書きにする
- 外来語、略語、ローマ字を使わない。必要なときは説明を添える
- 二重否定、受身形、推測表現を避ける。断定できないときは
  「かもしれません」を使う
- 文末は「です」「ます」にそろえる
- 元号は使わず西暦を使う。時刻は午前・午後を書く
- 「年度」は初出で期間を添える(例: 2027年度(2027年4月1日から
  2028年3月31日まで))
- 用字用語集にある語は、必ず集の表記に従う
- 日付、時刻、金額、人数、電話番号、住所、窓口名は一字も変えない
 
出力は次の順に出す
1. 書き換えた本文
2. 数字・固有名詞の対応表(原文の表記 → 書き換え後の表記)
3. 判断に迷った箇所とその理由

「数字・固有名詞の対応表」を毎回出させるのが要点です。後の照合で、この表が人の目のチェックの足がかりになります。

Projectsに用字用語集を置く

用字用語集や過去の広報紙は、毎回貼り直すより、ProjectsのKnowledgeに置いておくほうが手間がかかりません。Projectsには、自分専用のワークスペースとして、チャット履歴と知識ベースを持たせられます。

置き場所は3か所に分かれます。

置くもの置き場所理由
書き換えの規則、出力の形式置き場所プロジェクトの指示理由すべてのチャットに効く
用字用語集、ガイドラインの抜粋、変換の実例集置き場所プロジェクトの知識理由必要なときに参照させる資料
今回の原稿置き場所チャット理由号ごとに入れ替える

Projectsの作成画面で入れる名前と説明は、Claudeには渡りません。ルールは名前や説明ではなく、指示文に書きます。また、チャットの文脈はプロジェクト内でも共有されません。ある号の作業で決めた表記を次の号にも残すには、知識に追加する必要があります。

知識には、次のような資料を入れると効きます。

  • 自治体の用字用語集(漢字・かな・外来語の表記基準)
  • ガイドラインの本文、または規則を抜粋したテキスト
  • 過去の広報紙の「原文」と「やさしい日本語版」の対応例
  • 窓口名、施設名、部署名の正式名称の一覧

容量とプランの条件

プロジェクトの知識がコンテキストの上限に近づくと、有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)ではRAGモードが自動で有効になり、容量が最大10倍まで広がります。RAGモードでは、Claudeが「プロジェクト知識検索」ツールで必要な部分だけを取り出して使います。仕組みの違いはClaude ProjectsのRAG検索の仕組みと全文投入との違いにまとめています。

無料プランでは、作れるプロジェクトは5つまでです。用字用語集が長い自治体は、有料プランのRAGがどう働くかも合わせて確かめてください。

プロジェクトの知識に加えるファイルは、1ファイル30MBまでです。チャットに直接ファイルを添付する場合は、1チャットあたり最大20ファイル、1ファイル500MBまでの上限があります。PDFは1000ページが上限で、100ページ以下ならグラフなどの視覚要素も読み取り、101ページ以上は文字だけが対象です。広報紙のPDFをそのまま渡すときは、この点が効いてきます。上限の全体像はClaudeファイル上限の一覧で比べられます。

担当者間で共有する

TeamまたはEnterpriseプランなら、プロジェクトを組織内のメンバーと共有できます。権限は「閲覧のみ」と「編集可」の2段階で、編集可にしたメンバーは指示と知識を更新できます。用字用語集を更新する人だけに編集権限を渡し、校正担当は閲覧のみにすると、基準が勝手に書き換わるのを防げます。組織全体への公開を管理者が止めている場合の扱いは、Claude組織のプロジェクト公開を無効化する方法を参照してください。

なお、Projectsには、1つのプロジェクトが1つの会話になり、Claudeが作業を並列のスレッドに分けて進める新方式が、Claude Code向けのベータとして段階的に展開されています。チャットとCoworkの既存プロジェクトはこれまでどおり動きます。この記事の手順は、チャットの既存方式に沿っています。

書き換えの手順

ここからは、実際の作業順です。

手順

1号分の原稿を書き換える流れ

  1. 1

    プロジェクトを用意する

    指示文と用字用語集を入れたプロジェクトを作ります。2号目以降は、このプロジェクトを使い回します。

  2. 2

    記事ごとに原稿を貼る

    記事単位で貼ると、対応表が短くなり、照合も楽になります。

  3. 3

    出力を読み、迷った箇所を決める

    「判断に迷った箇所」の欄に挙がった内容を、広報担当が決めます。

  4. 4

    数字を照合する

    次の節のスクリプトか、対応表の目視で確かめます。

  5. 5

    日本語教師や外国籍の住民に読んでもらう

    ガイドラインの3段階目にあたる確認です。

書き換えの一例

次の例は、ガイドラインの規則に沿った書き換えの一例です。数字や制度名は説明用の架空のものです。Claudeが実際に出す文はプロジェクトの指示や原稿によって変わるため、出力そのものを示しているわけではありません。

【原文】
令和9年度の国民健康保険税の納期は、7月から翌年2月までの8回と
なっておりますので、期限までに納付をお願いいたします。
ご不明な点は、保険年金課(市役所3階)までお問い合わせください。
 
【規則に沿った書き換えの例】
2027年度(2027年4月1日から2028年3月31日まで)の国民健康保険税は、
2027年7月から2028年2月まで、8回に分けて払います。
払う日は、納付書に書いてあります。
わからないことは、市役所の3階にある保険年金課に聞いてください。

この書き換えでは、元号を西暦にし、初めて出る「年度」に期間を添え、「納期」を「払う日」に言い換えています。「お願いいたします」「お問い合わせください」は、敬語を丁寧語に揃える規則で整えました。一方、「8回」「7月」「3階」は動かしていません。

日付・金額・窓口の数字を崩さない照合

書き換えで最もやってはいけないのは、数字の変更です。ガイドライン自体は書き換え後の表記を決めるものですが、数字を保つ照合までは扱っていません。ここは広報側で仕組みを持ちます。

方法1: Claudeに対応表を出させる

指示文で出力させる「数字・固有名詞の対応表」は、原文と書き換え後を並べて見るための表です。表の行を上から順に原文と突き合わせれば、拾い漏れが見つかります。

方法2: スクリプトで数字の集合を比べる

人の目だけでは、見落としが残ります。もう一つの手段として、原文と書き換え後のテキストから数字だけを抜き出して比べる小さなスクリプトを用意します。全角数字は半角にそろえ、カンマも取り除いて比べます。

import re
import sys
import unicodedata
 
 
def numbers(path):
    text = unicodedata.normalize("NFKC", open(path, encoding="utf-8").read())
    text = text.replace(",", "")
    return set(re.findall(r"\d+(?:\.\d+)?", text))
 
 
before = numbers(sys.argv[1])
after = numbers(sys.argv[2])
print("原文だけにある数字:", sorted(before - after, key=float))
print("変換後だけにある数字:", sorted(after - before, key=float))
python3 check_numbers.py before.txt after.txt

出力の読み方は次のとおりです。

  • 原文にあって書き換え後に無い数字は、消えたか、書き換わった数字です
  • 書き換え後だけにある数字は、勝手に足された数字か、書き換わった結果の数字です
  • 「令和9年度」を「2027年度」にした分のように、意図した変更は両側に現れます。意図どおりかを人が判断します

たとえば金額の「12,000円」が書き換え後に「1200円」となっていれば、原文側に12000、書き換え後側に1200が現れて、桁の違いが見つかります。

このスクリプトが見るのはアラビア数字だけです。「三階」「十二月」のような漢数字は拾えないので、そこは対応表での目視に頼ります。住所や電話番号の一致、窓口の正式名称も、スクリプトでは確かめられません。

つまずきやすい点

推測表現を避ける規則と、事実の曖昧さ

ガイドラインは、「おそらく」「可能性があります」といった推測表現を避け、断定的に書くよう求めています。ただし、広報紙の原文が事実として不確かなことを述べているときは、無理に断定すると誤りになります。ガイドラインは、断定が問題になる場合は「かもしれません」「たぶん〜です」を使うとしています。指示文にも同じ扱いを書いておきます。

ふりがなと機械翻訳

ガイドラインは、漢字にはすべてふりがなをつけるよう求めています。一方で、機械翻訳にかける可能性があるため、ネットで発信するときはふりがなをつけない原稿も用意するとよいとしています。Claudeには「ふりがなあり」と「ふりがななし」を別々に出させる運用が合います。

地名・人名・施設名の読みは、自治体ごとの慣用があります。用字用語集に読み方を併記しておき、読みの確認は人が行います。

個人情報を含む通知文

広報紙は公開前提の文書ですが、個別の通知文には住民の氏名や住所が入ります。宛名や個人を特定できる情報は取り除いてから、本文だけを貼ります。組織として生成AIの利用ルールがある場合は、それに従ってください。

同じ型で別の文書を作る

町内会やPTAの会報のように、過去の文書を知識に置いて文体を揃える手順はPTAや町内会の文書をClaudeのProjectsで作るで扱っています。出力の日本語が硬いときに指示文で直す方法はClaudeの日本語が不自然なときカスタム指示で直す方法にあります。

まとめ

広報紙のやさしい日本語化は、Claudeに規則どおりの書き換え案を作らせ、数字の保存は別の仕組みで照合する、という二層で進めると安全です。規則はガイドラインの本文からそのまま指示文にでき、用字用語集はProjectsの知識に置けば号をまたいで使えます。数字の照合は、対応表の目視とスクリプトの二重にしておくと、桁の変化のような単純な誤りを逃しにくくなります。最後に日本語教師や外国籍の住民に読んでもらう工程を残すことが、ガイドラインの考え方にも合っています。

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