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中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインに生成AIの項を足す — Claude利用ルール案

中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインに生成AIの項を足す — Claude利用ルール案

IPAの規程サンプル(付録5)には生成AIを名指しする条項がありません。機密区分・オンラインサービス・委託管理の条にClaudeの利用ルールを足す案と、契約プラン別のデータ取扱いの対応を示します。

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版に付く規程サンプル(付録5)は、組織的・人的・物理的・技術的の4分類で組まれています。ところが、本稿で確認した範囲では、生成AIを名指しする条項がありません。生成AIに触れているのは、本編(全70ページ)のコラム1か所だけです。

Claudeを社内で使い始めた中小企業が、このサンプルをもとに規程を整えるなら、既存の条に生成AI向けの一文を足す作業になります。足す場所と、そこに書く内容がこの記事の主題です。あわせて、Claudeの契約プランによってデータの扱いが変わる点を、機密区分とどう結びつけるかも見ていきます。

IPAのガイドラインは生成AIをどこまで扱っているか

ガイドラインは経営者編と実践編の二部構成で、個人事業主や小規模事業者も対象にしています。第4.0版は2026年3月27日に公開され、その後も解説資料の追加などで更新が続いています。付録は9本あり、規程はWord形式の付録5(全59ページ)です。赤字を自社の事情に書き換え、青字は文言を選び、必要な対策を取捨して使う作りになっています。

生成AIの記述は、本編のコラム「生成AIの利用とサイバーセキュリティ」にあります。注意点は4つです。

  1. 生成AIの利用規約とプライバシーポリシーを事前に確認し、データの取り扱い方針を把握する
  2. 機密性の高い情報や個人情報など、外部に漏れると問題になるデータはAIサービスに入力しない
  3. 生成された成果物は必ず人間が確認し、正確性や法的リスクをチェックする
  4. AIの出力内容をそのまま業務で利用せず、補助的ツールとして活用する

コラムの時点で、入力データ・規約の確認・出力の人間確認という骨格はそろっています。ただし規程サンプル側には対応する条文がなく、コラムの4点を社内ルールにするには自社で書き起こす必要があります。

付録5のどの条に生成AIの一文を足すか

規程サンプルを読むと、生成AIの論点は新しい章を立てなくても既存の条に収まります。足す先と内容は次のとおりです。

付録5の条既存の内容生成AI向けに足す一文
組織的対策5.1情報資産の特定と機密性の評価既存の内容機密性3(極秘)・2(社外秘)・1(公開)の3区分生成AI向けに足す一文区分ごとにClaudeへ入力してよい範囲
組織的対策5.6情報資産の社外持ち出し既存の内容社外秘は部門長、極秘は代表取締役の許可生成AI向けに足す一文Claudeへの入力を社外への持ち出しとして扱うか
組織的対策5.7外部情報システムの管理既存の内容クラウドサービス提供者を含む一覧を作る生成AI向けに足す一文契約種別とモデル改善への利用設定を一覧に載せる
組織的対策7.1オンラインサービス既存の内容利用はシステム管理者の許可制生成AI向けに足す一文Claudeの利用承認と、許可するプランの指定
組織的対策8委託管理既存の内容委託先評価基準と契約の明記事項生成AI向けに足す一文業務をAI事業者に渡す場合の評価と契約確認
人的対策2従業員の責務既存の内容営業秘密の提供禁止、規程の遵守生成AI向けに足す一文出力の確認責任と、禁止する入力
人的対策4情報セキュリティ教育既存の内容必須テーマを含む年度計画生成AI向けに足す一文生成AIの入力ルールを教育テーマに追加
人的対策6.4.2クラウド・SNSの利用既存の内容私用クラウドで業務データを扱わない生成AI向けに足す一文個人アカウントのClaudeを業務に使わない

最後の行は見落としやすい箇所です。6.4.2は「テレワーク端末で個人的にクラウドサービスを使う場合」の定めで、業務関連データの送受信・保存・共有に使わないと書いています。社員が自分のFreeやProのアカウントで業務の文章をClaudeに貼る行為は、この条の延長で止められます。生成AI専用の条を新設するより、既存条文の対象にClaudeを明示するほうが、規程全体の体裁を崩さずに済みます。

契約プランでデータの扱いはどう変わるか

規程の土台になる事実は、どの契約で使うかによってデータの扱いが分かれる点です。分岐の軸は、Claudeの利用規約が個人向け(Consumer Terms)か、法人向け(Commercial Terms)かの1点です。

項目Free・Pro・MaxTeam・Enterprise・API
モデル学習への利用Free・Pro・Max設定がオンのとき対象Team・Enterprise・API既定で対象外
保持期間Free・Pro・Max学習を許可すると5年、許可しないと30日Team・Enterprise・API標準は30日
保持なしの契約Free・Pro・MaxなしTeam・Enterprise・API適格な組織向けにZero Data Retention(Claude CodeはEnterprise)
設定の主体Free・Pro・Max利用者本人Team・Enterprise・API組織の管理者

法人向けの「学習されない」には例外があります。サムズアップ・ダウンで評価を送ると、関連する会話全体が最長5年保存され、ユーザーIDから切り離したうえで学習に使われる場合があります。Development Partner Programのように、管理者が明示的にオプトインした場合も同様です。つまり、法人契約でも「何も送られない」わけではなく、「既定では学習に使われない」にとどまります。プラン別の詳細はClaude Codeのデータは学習に使われるかに表でまとめています。

個人向けプランでは、設定の確認を各自に任せる形になります。切り替え方はClaudeを学習させない設定の手順のとおりです。規程の側で「個人アカウントでは業務情報を扱わない」と決めておけば、設定の確認漏れを個々の判断に委ねずに済みます。

機密区分とプランを対応させる規程案

付録5の機密性3区分と、契約種別を組み合わせた対応表を規程の別表にする案を示します。入力の可否は自社のリスク判断なので、以下は書き方の一例です。

機密区分個人向けプラン法人向けプラン(標準)保持なしの契約
機密性1(公開)個人向けプラン可法人向けプラン(標準)可保持なしの契約可
機密性2(社外秘)個人向けプラン不可法人向けプラン(標準)責任者の承認を得て可保持なしの契約可
機密性3(極秘)個人向けプラン不可法人向けプラン(標準)不可保持なしの契約責任者と代表取締役の承認を得て可

極秘の行は、付録5の5.6が極秘の持ち出しに代表取締役の許可を求めている構造に合わせました。Claudeへの入力を「社外のサービスへ情報を渡す行為」とみなすなら、同じ承認ラインを借りるのが整合的です。

規程の本文は、たとえば次のような形になります(自社で書き起こした案です)。

7.3 生成AIサービスの利用(新設)
従業員は、生成AIサービスを業務で利用する場合は、システム管理者の許可を得る。
許可するサービスと契約種別は「外部情報システム一覧」に記載したものに限る。
従業員は、契約者が個人であるアカウントでは、機密性2以上の情報資産を入力しない。
機密性3の情報資産は、情報セキュリティ責任者と代表取締役の承認を得た場合のみ入力する。
生成された成果物は、利用した従業員が内容を確認し、その責任を負う。
成果物を取引先へ提出する場合は、所属部門長が確認する。

IPAの文書を改変して使うときは、引用条件に従う必要があります。出典(機構名・資料名・URL)を明記し、一部改変した場合は「~を基に作成」のように原文のままでないことを示し、転載部分と自社作成部分を区別します。上の7.3は自社で書き起こした条文なので、付録5からの転載部分と混在させる場合は、その線引きを版管理の欄に残しておくと後から追えます。

外部情報システム一覧と委託管理にどう載せるか

5.7は、取引先やクラウドサービス提供者を含む「当社以外の組織が提供し、当社の情報資産が接続または利用している情報システム」の一覧を作るよう求めています。Claudeはこの一覧に載せる対象です。

一覧の項目は基本情報・利用管理者・保守契約・ライセンスですが、生成AIでは列を2つ足すと運用しやすくなります。

  • 契約種別: 個人向けか法人向けか、保持なしの契約があるか
  • モデル改善への利用: 学習に使われる設定か、使われない契約か

プランの選択を含めて社内で比較するときは、料金と対応範囲をClaudeの料金プランで確認できます。

委託管理(8)は、情報資産の重要度が1以上の業務を外部に委託する場合の評価基準です。Claudeを道具として使うだけなら委託には当たらず、5.7の一覧で足ります。業務そのものをAIサービスに渡す設計にした場合は、委託先評価の視点が必要になります。そのとき参考になるのが付録7「クラウドサービス安全利用の手引き」のチェックシートで、15項目を「選択するとき」「運用するとき」「セキュリティ管理」に分けて確認します。生成AIに引き直すと、次の項目が効きます。

  • No.3: 取り扱う情報の重要度を確認する
  • No.4: 自社のセキュリティルールと矛盾しないようにする
  • No.13: 利用終了時のデータの取扱い条件を確認する
  • No.14: 適用法令や契約条件を確認する
  • No.15: データ保存先の地理的所在地を確認する

No.4は、まさに生成AI規程の趣旨そのものです。既存の規程が「社外秘は社外のサービスに保存しない」と定めているのに、Claudeへの入力を黙認していれば、矛盾が生じます。

管理者が設定で担保できること

規程に書いた内容を運用で担保する手段も、契約種別によって変わります。法人向けプランでは、管理者が次を設定できます。

  • 評価ボタンの送信停止: TeamとEnterpriseの所有者は、組織設定のData and Privacyにある設定で、メンバーがサムズアップ・ダウンでフィードバックを送れないようにできます。前節の例外を塞ぐ設定で、Rate chatsの切り替え手順にあります
  • 保持期間の調整: Enterpriseでは管理者がデータ保持期間をカスタム設定でき、Enterpriseのデータ保持期間の設定手順が使えます
  • 保持なしの契約: Zero Data Retentionは標準のEnterpriseプランには含まれず、アカウントチームが適格性を確認したうえで組織単位で有効にします

Claude Codeを開発に使う会社は、端末側の保存も規程の対象です。セッションの記録は、手元の~/.claude/projects/に平文で既定30日間残ります。期間はcleanupPeriodDaysで変えられるので、5.8のIT資産管理や技術的対策の端末管理に「記録の保存期間」を書き加える案があります。個人情報を扱う案件のリポジトリでは、保存期間を短くする設定も選択肢です。

規程に落とすときの落とし穴

最後に、条文化で抜けやすい点を挙げます。

個人アカウントの混在。法人契約を結んでも、社員が個人アカウントを併用する限り、規程の対象外のデータの流れが残ります。対応表で「契約者が個人」を明示的に不可にするのは、そのためです。

コネクタと貼り付け。個人向けプランの学習対象には、コネクタやMCPサーバーから取得した生のコンテンツは含まれません。ただし会話に直接コピーして貼り付けた分は含まれる場合があります。「コネクタ経由だから安全」という前提は、貼り付けで崩れます。

フィードバック経路。評価ボタンや/feedbackは、学習の設定とは別の系統でデータが保存されます。規程で「入力禁止」と書いても、評価ボタンを押した時点で会話が送られるなら、禁止した情報が出ていく経路が残ります。

個人情報の入力。機密区分の対応表は、個人情報保護法に基づく取り扱いまでは決めません。個人データを入力する場合の確認先は、Claudeに個人情報を入力する前に確認する一次資料に整理しています。

社内規程としての位置付け。ここで示した条文は、IPAのサンプルを自社向けに書き換える一例です。取引先から情報セキュリティの要求がある場合は、その要求を満たす内容に合わせて修正します。AI利用の規程全般の組み立ては、社内AI利用規程にAI事業者ガイドラインが求める内容も参照できます。

まとめ

IPAの規程サンプルは4分類の既存条文を持ち、生成AIの条を足さなくても、機密区分(5.1)、外部情報システム(5.7)、オンラインサービス(7.1)、私用クラウド(6.4.2)、従業員の責務、教育の6か所にClaudeの利用ルールを書き込めます。

コラムの「規約を事前に確認する」は、そこで止まると運用に落ちません。規程に落とすなら、確認結果を「契約種別」と「モデル改善への利用」の2列で外部情報システム一覧に残し、機密区分との対応表で入力の可否を決めるところまで書くと、運用の判断材料になります。Claudeの場合、その分岐の軸は、個人向けか法人向けかの契約です。

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