Coworkで契約書をバッチレビューする — フォルダとPlaybookで一括処理する手順
Coworkはフォルダの契約書をまとめてPlaybookと突き合わせ、契約ごとの逸脱点をメモに書き出せます。手順と検算のコツをまとめます。
Coworkの契約書バッチレビューとは、契約書が並んだフォルダとPlaybook(自社の審査基準をまとめた文書)を1つの依頼で突き合わせ、契約ごとに逸脱点をまとめたメモを作らせる使い方です。Claudeは各契約書を条項ごとにチェックし、Playbookの基準からどこがどれだけ外れているかを条項番号付きで書き出します。
手順そのものは短く、フォルダを用意して依頼文を書き、出てきたメモを検算するだけです。迷いやすいのは手順の外側にあります。契約書がAnthropicのサーバーで処理されること、定期実行がPCのフォルダに結び付かないこと、2026年10月6日にProとMaxの実行場所が変わること。この3点を順に押さえます。
公式サンプルのメモには何が入っているか
製品ページはこの使い方を「Review in bulk」として紹介しており、次のプロンプト例を示しています。
These vendor agreements in Contracts/Inbound are up for review.
Check each one against our playbook in Legal/Playbook.docx and
write me a memo per contract: where it departs from our positions,
how far, and which departures are worth pushing back on.
Cite the clause number for every issue.
Flag anything the playbook doesn't cover.末尾の2文が肝心です。条項番号の引用を毎回求めているので、検算で原文に当たれます。Playbookにない論点も拾わせているため、基準が空白の条項を見落としにくくなります。
同じページに載っているサンプルのメモは、次の3層でできています。
サンプルのメモの3層構造
見出し行
対象フォルダ、契約書のドラフト版、照合したPlaybookの改訂時期、作成日が1行に並びます。サンプルでは「draft v2」と「rev. March 2026」の記載があります。
冒頭の要約
「What matters most」として、押し戻す件、交渉する件、受け入れる件、Playbookが扱っていない件を数えた1段落が先頭にあります。
条項ごとの1行
条項番号と条項名に、影響度(High・Medium・Low)と対応(Push back・Negotiate・Accept)が付きます。Playbookにない条項は「Not covered · Needs you」です。
見出し行にPlaybookの改訂時期が入る点は、運用でも使えます。メモを開いた時点で、どの版の基準で判定されたかが分かるため、古い基準での判定を見つけやすくなります。
フォルダを渡すだけで件数分の下読みが同じ形式で揃うことが、契約書を1件ずつ依頼するのとの違いです。同じ「フォルダを渡してまとめて処理する」骨格は契約書以外の業務にも使われています。ベンダーのオンボーディングを一括処理する例はCoworkでベンダーのオンボーディングを一括処理するにまとめています。対象が資料か契約書かが変わるだけで、進め方は共通です。
準備するもの
バッチレビューを始める前に、プラン・フォルダ・Playbookの3点をそろえます。
1つ目はプランです。Coworkは有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)で使えます。手元のフォルダを読み書きさせるには、macOSまたはWindowsのClaude Desktopアプリを開いて接続しておく必要があります。
ProとMaxでは、2026年10月6日から新しいCoworkタスクがクラウドで動き、設定 > 一般の「Only on your computer」の選択肢がなくなります。すでにPCで始めたタスクはPCに残ります。クラウドで動くセッションは、アプリを閉じてもPCがスリープしても走り続けます。ただし、ローカルのファイルやブラウザーを使うタスクでは、Claudeが届くようにアプリを開いておきます。
Pro・Maxで入力欄に「Chat」と「Cowork」の選択肢が出ない場合は、チャットとCoworkが1つのClaudeになった新しい体験です。会話にそのまま依頼を書けば、Claudeが質問への回答か作業かを判断します。依頼文は、どちらの画面でも本記事のものをそのまま使えます。
2つ目はフォルダ構成です。受信した契約書と審査基準のPlaybookを、1つの上位フォルダにまとめます。公式のプロンプト例はContracts/Inboundに契約書を、Legal/Playbook.docxにPlaybookを置く構成ですが、名前もパスも固定ではありません。Coworkで「+ Add folder」からこのフォルダを選ぶと、Claudeが読み書きできるのは接続したフォルダの中だけになります。安全利用のヘルプは、広い範囲を渡さず専用の作業フォルダを作るよう勧めています。ホームディレクトリの外にあるフォルダを使う場合の制約はCoworkでホームディレクトリ外のフォルダを使う方法にまとめています。
3つ目はPlaybookの中身です。「支払い条件はネット30以内」「損害賠償の上限は契約金額の範囲内」のような自社の基準を、条項ごとに読み取れる形で文書化しておきます。基準が曖昧なままだと、逸脱判定の粒度もぶれます。
ステップ1: フォルダをCoworkプロジェクトとして保存する
フォルダを選んだら、そのままCoworkプロジェクトとして保存しておきます。プロジェクトは、ファイル・指示・メモリーを持つ独立した作業場です。Playbookと指示が残るので、次のバッチで同じ基準を説明し直さずに済みます。
保存先で挙動が分かれる点に注意してください。PC上の既存フォルダから作ったプロジェクトはそのPCに残り、Claudeアカウントには保存されません。Coworkで新規に作ったプロジェクトはアカウントに保存され、他の端末からも開けます。メモリーはプロジェクトごとに分かれていて、別のプロジェクトには引き継がれません。
Team・Enterpriseでは、プロジェクトを組織内の人に「Can view」か「Can edit」で共有できます。Playbookを法務チームで共有し、更新を1人に任せる運用はこの機能で組めます。
ステップ2: バッチレビューの依頼文を書く
依頼文には、対象フォルダ・Playbookの場所・出力形式の3つを明示します。Contracts/Inboundに未着手のベンダー契約が12件たまっている、という想定で書くと次のようになります。
Contracts/Inboundにある未着手のベンダー契約12件をレビューしてください。
Legal/Playbook.docxを基準に、契約ごとに次のメモを1件ずつ作成してください。
- 基準から外れている条項番号と、外れている度合い
- 条項ごとの対応方針は「押し戻す」「交渉する」「許容」のいずれかで記載
- Playbookが対象にしていない条項は「基準なし」と明記
- 契約全体を受諾してよいかの結論は書かない
- メモの見出し行にPlaybookの改訂時期を書く
- メモはContracts/Reviewedフォルダに、契約ごとのファイル名で保存公式のプロンプトは、押し戻す価値のある逸脱の選別までClaudeに求めています。アカデミーのページには、依頼文に「flag anything you're not confident about」を足すと、見直しでどこから当たればよいか分かる、という助言があります。標準的な条項は1行で済ませ、詳しく書かせるのはリスクのある条項に絞る、という助言もあります。優先順位づけは任せ、契約全体を受諾するかどうかの結論は人が持つ。この線引きを依頼文に書いておくと、責任の所在が曖昧になりません。出力先を別フォルダにしておけば、原本と成果物も混ざりません。気に入った出力例をフォルダに入れておくと、Coworkがその構成と文体に合わせる、ともアカデミーのページにあります。
複雑な依頼では、Claudeが複数のサブエージェントを並行して動かすことがあります。製品ページも、大きなプロジェクトを分割して同時に進める動作を紹介しています。この分割と並列化の仕組みはCoworkサブエージェントの使い方で扱っています。
ステップ3: 出力されたメモを検算する
メモが出そろったら、法務側で確認できる形に絞って検算します。順序を決めておくと抜けが減ります。
検算の順序
- 1
件数を合わせる
メモの件数とフォルダ内の契約書の件数が一致しているかを見ます。ずれていれば処理漏れの兆候です。
- 2
数値を全件確認する
金額・期間・上限が動いた条項は、変更前後の数値が両方とも書かれているかを全件で見ます。
- 3
条項番号を抜き取る
条項番号が原文の該当箇所と対応しているかを、3〜5件の抜き取りで確かめます。
- 4
「基準なし」を見直す
「基準なし」に振られた条項が、本当にPlaybookの対象外かを確認します。
数値だけを全件確認にする理由があります。金額や期間の取り違えは、メモの見た目からは異常が読み取れないためです。損害賠償の上限が契約金額の範囲内か、その2倍かは、整ったメモの中では同じ1行に見えます。
Commercial Legal公式プラグインを使うと何が変わるか
ここまでの手順はプラグインなしでも動きます。一方でCoworkにはCommercial Legalという公式プラグインがあり、アカデミーのページでは法務向け12種の実務領域プラグインの1つとして紹介されています。ベンダー契約・NDA・SaaS契約を、販売側または購買側のPlaybookと突き合わせる用途です。更新・解約期限の追跡と、承認者への振り分けも担います。
ベンダー契約を受ける側の立場なら、使うのは購買側のPlaybookです。立場を取り違えると、基準の向きが逆になります。
使い始める前に、手順が2つあります。
1つ目は、ソースの有効化です。Commercial Legalは、Anthropicの「Claude for Legal」というソースから提供されます。Team・Enterpriseでは管理者が組織のプラグイン設定でこのソースを1度有効にし、個人プランでは本人が有効にします。「Add」を押しても目的のプラグインに移動しないときは、たいていこの手順が抜けています。
2つ目は、/cold-start-interviewの実行です。2分で終わる簡易版と、実際の文書を使って10分以上かける版があります。ここで自社のPlaybookを読み込ませると、他のスキルはその内容を前提に動きます。
使えるスキルは9つで、代表的なのは次の3つです。
/review: ベンダー契約・NDA・SaaS契約をPlaybookと照らして確認する/escalation-flagger: エスカレーション表に従って承認者を判断し、依頼文の下書きまで作る/cold-start-interview: 自社の実務を聞き取り、チームの実務プロファイルを作る
条項ごとに緑・黄・赤で判定し、黄・赤には修正案と相手方向けの根拠を付ける流れは、アカデミーの「契約書レッドライン」の例で示されています。この例の依頼文は、Playbookに照らして条項を評価し、黄・赤の条項には相手方に出せるレッドラインと理由の下書きを求めるものです。バッチで押し戻す契約を絞り込み、その後に1件ずつレッドラインを作る二段構えに向いています。1件のレッドラインの手順はClaude契約書レッドラインにあります。
アカデミーの例には、レッドラインの出力先に応じたコネクタも並びます。Ironclad、Microsoft 365(Wordに修正履歴として反映し、SharePointへ保存)、iManage、NetDocumentsです。設定はCustomize → Connectorsから行います。
指示文とプラグインの違いは、判定基準の持ち方にあります。指示文はその場で自由に条件を書けますが、毎回同じ文面を用意します。プラグインは/cold-start-interviewでPlaybookを読み込ませれば、他のスキルがその内容を前提に動きます。保存したプラグインは、チャットやClaude Codeでも使えます。公式プラグインの全体像は、製品ページでLegalとして紹介されているものを含め、Cowork公式プラグイン3種を試すにまとめています。
定期実行は手元の受信フォルダを見られるのか
契約書が継続的に届く業務では、/scheduleで定期実行にしたくなります。Cowork内のタスクで/scheduleと入力するか、左サイドバーの「Scheduled」から作成します。頻度は毎時・毎日・毎週・平日・手動から選べます。
迷うのは、手元のフォルダが関わる場合です。同じヘルプページの中に、次の2つの記述があります。
定期実行とフォルダの関係
クラウドで動く定期実行
組み込みのスケジュールと、コネクタ・Claudeアカウントに保存したファイルで動きます。PCがスリープでも、Desktopアプリが閉じていても走ります。注記には「PCのフォルダには結び付けられない」とあります。
ローカルで動く定期実行
ローカルのファイルやアプリが必要なタスクは、ローカルでのみ実行される、とあります。フォルダの指定欄は任意項目です。
2つの記述を合わせると、実行場所は使う素材で決まると考えられます。アカデミーの例はContracts/Intakeのフォルダ監視を載せていますが、スケジュールのヘルプは手元のフォルダに結び付けられないと書いており、両者は食い違います。受信フォルダをPCに置いたままの定期監視は、PCが起動してアプリが開いている前提の構成になります。PCに依存させないなら、契約書の受け取り先をコネクタ側に置く構成が、ヘルプの説明に沿います。ヘルプの例にも、Google Driveのファイルから週次レポートを作るタスクがあります。
もう1点あります。安全利用のヘルプは、定期実行で機密ファイルを扱うことや、取り消しにくい操作を避けるよう案内しています。まず低リスクな要約から始め、実行のたびに結果を見直し、使わないタスクは一時停止か削除する流れです。契約書は機密性が高いため、最初は件数の少ない読み取りだけの定期実行から試すのが無理のない進め方です。
バッチ処理が「今たまっている分をまとめて片付ける」作業なのに対し、定期実行は「新着を取りこぼさない」ための仕組みです。役割が違うので、使い分けは後の節の表に並べます。
承認モードと機密文書の扱い
承認モードは、コネクタのツールを使う場面でClaudeがいつ許可を求めるかを決めます。入力欄のモード選択からいつでも切り替えられます。
| モード | 挙動 | 契約書バッチでの向き |
|---|---|---|
| 手動承認(Manual) | 挙動各操作の前に停止して許可を求める | 契約書バッチでの向き初めて回すバッチ、機密性の高い案件 |
| 自動承認(Auto) | 挙動読み取りのみのツールは承認。書き込み・削除はClaudeが判断し、危険と判断した操作を止める | 契約書バッチでの向き慣れたフォルダ構成の定型的な繰り返し |
| 承認スキップ(Skip) | 挙動確認も自動チェックもなく進める | 契約書バッチでの向き機密文書を含む案件では選ばない |
新しい体験の入力欄で選べるのは自動承認と手動承認で、既定は手動承認です。Team・Enterpriseで自動承認を選べるかは、管理者が決めます。既定は利用可で、管理者が無効にするとモードの選択肢から消えます。自動承認は安全確認の分だけ、他のモードより使用量を多く消費します。
安全利用のヘルプは、機密ファイルを扱うとき、初めてのツールやプラグインを使うとき、送信や購入のように取り消しにくい操作があるときに、手動承認へ戻すよう案内しています。契約書バッチは、この条件の1つ目に当たります。
相手方から届いた契約書は、外部から来た信頼できない文書でもあります。文書に紛れ込ませた指示をClaudeがタスクの一部として読んでしまう攻撃を、プロンプトインジェクションと呼びます。ヘルプによると、成立するには「信頼の範囲の外を読める」ことと「害になる行動を取れる」ことの両方が必要です。片方を欠かせれば成功しにくくなります。契約書を読ませるセッションでは、書き込み系や外部送信のコネクタを接続しないことが、後者を断つ具体策になります。
Web検索やWebフェッチ、MCPには、ネットワーク送信の許可設定が効きません。Team・Enterpriseのオーナーは、組織設定のCapabilitiesでWeb検索をオフにできます。ファイルの完全削除は、どのモードでも事前に許可を求められます。
守秘の面で押さえたい食い違いがもう1つあります。アカデミーの契約書レッドラインのページは、追加したファイルは手元に残り、Claudeの学習には使われず、Coworkはローカルで読むと説明しています。一方で安全利用のヘルプは、クラウドのセッションではローカルのファイルを開いた分もAnthropicのサーバーで処理されると書いています。NDAを交わした相手の契約書を渡す前に、どちらの前提で運用するかを社内の取り扱い規程と照らして決めます。後者の前提に立てば、扱いを誤るおそれが小さくなります。
メモリーにも注意が必要です。クラウドのセッションは、チャットで覚えた内容から作業を始め、タスクで出た内容がチャットに戻ります。1件の契約書の詳細を持ち込みたくない場合は、最初のメッセージを送る前に「+」メニューで「Memory」をオフにします。この設定はタスクの開始時に決まり、後から変えられません。
単発の契約書レビューで同じリスクをどう扱うかは、Claude Cowork法務活用で詳しく扱っています。
単発・チャット・バッチ・定期実行の使い分け
契約書をClaudeに読ませる方法は1つではありません。案件の性質によって向く方法が変わります。
| 場面 | 向く方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 今すぐ1本だけ確認したい | 向く方法Claude.aiでのチャット | 理由フォルダ整備を待たず会話1本で開始でき、交渉メールへの変換まで同じ会話で完結する |
| 受信フォルダに複数件たまっている | 向く方法Cowork(本記事の手順) | 理由フォルダ単位で一括処理し、契約ごとのメモを同じ形式でそろえられる |
| 新着契約書を取りこぼしたくない | 向く方法Coworkの/schedule + Commercial Legalプラグイン | 理由受け取り先をコネクタ側に置けば、PCに依存せず新着分だけを定期的にレビューできる |
| 社内規程の新旧対照表など契約書以外もまとめたい | 向く方法Cowork(フォルダ横断) | 理由複数ファイル・複数文書種別を横断した整理に向く |
Claude.aiのチャットで1本の契約書をレッドラインし、交渉メールまで作る手順はClaude契約書レッドラインにまとめています。どちらを選んでも、法的な結論は人が持ちます。
よくあるつまずき
出力先フォルダを分けていない場合、メモが原本と同じフォルダに並び、次の依頼で「フォルダ内の契約書」とメモの区別がつきにくくなります。Contracts/Reviewedのような別フォルダを最初から指定しておくと避けられます。
Desktopアプリを閉じてしまうと、ローカルのフォルダを使うタスクではClaudeがフォルダに届かなくなります。ヘルプにも、セッション自体はアプリを閉じても走り続けるが、ローカルのファイルやブラウザーを使うタスクはアプリが開いていないとClaudeが届かない、とあります。完了まで開いたままにしておきます。
Playbookが古いまま更新されていないと、基準が変わったのに判定は古い基準のまま出てきます。基準を変えたら、次のバッチを回す前にファイルを差し替えます。メモの見出し行に改訂時期を書かせておけば、差し替え漏れに気づけます。
1件分の依頼のつもりでバッチ手順を使うのも非効率です。契約書が1件だけなら、フォルダを用意して依頼する準備のほうが重くなります。チャットなら、フォルダを整える手間なしにそのまま始められます。
まとめ
バッチレビューの精度を決めるのは、依頼文より検算です。件数、数値の全件確認、条項番号の抜き取り、「基準なし」の見直しを順に回せば、整って見えるメモの取り違えを拾えます。
守秘の前提は、契約書がAnthropicのサーバーで処理される側に合わせてください。定期実行にするなら、受け取り先をPCのフォルダではなくコネクタ側に置きます。