自治会の総会議案書と書面決議をClaudeで作る — 認可地縁団体の手順
認可地縁団体の自治会が総会議案書と書面決議の回覧文を作る手順です。地方自治法260条の19の2の第1項・第2項の違いをClaudeに判定させ、集計も検算します。
認可地縁団体の自治会が総会の議案書と書面決議の回覧文を作るとき、Claudeには「条文と規約を突き合わせた下書きと点検表」を任せられます。決議が成立するかの判断は、人が条文と規約で確かめます。
この記事の対象は、市町村長の認可を受けた自治会・町内会(認可地縁団体)です。取り上げる条文は地方自治法の第260条の13から第260条の19の2までで、認可を受けていない任意の自治会にはそのまま当てはまりません。
Claudeに任せる範囲と、人が決める範囲
総会書類づくりは、条文の条件を拾う作業と、文面を整える作業に分かれます。Claudeが得意なのは後者と、前者の抜けの洗い出しです。
| 作業 | Claudeに任せる | 人が決める |
|---|---|---|
| 議案書の下書き | Claudeに任せる議案ごとの見出し・提案理由・決議事項の文面 | 人が決める議案の中身、金額、役員の人選 |
| 決議要件の点検 | Claudeに任せる規約と条文から、議案ごとの要件を一覧にする | 人が決める要件を満たすかの最終判断 |
| 書面決議の回覧文 | Claudeに任せる承諾を問う書面と、賛否を問う書面の二通り | 人が決めるどちらの方式を使うか |
| 集計 | Claudeに任せる回収した表決書の集計表と検算 | 人が決める白紙・無効票の扱い |
| 議決結果の周知文 | Claudeに任せる回覧用の短い報告文 | 人が決める規約変更後の市町村長への認可申請 |
Claudeの出力は下書きです。条文番号と数字は、必ず原文に当たり直してください。
作る前に確かめる条文の線
議案書に書く内容は、条文が先に決めています。次の4点を規約と突き合わせておくと、議案書の骨格がぶれません。
- 通常総会は、代表者が少なくとも毎年1回開きます(第260条の13)
- 臨時総会は、総構成員の5分の1以上から会議の目的を示して請求があれば招集します。割合は規約で変えられます(第260条の14)
- 招集の通知は、総会の日より少なくとも5日前に、会議の目的である事項を示し、規約で定めた方法でします(第260条の15)
- 総会で決議できるのは、あらかじめ通知した事項だけです。規約に別段の定めがあれば例外が認められます(第260条の17)
最後の点が議案書づくりに直結します。通知に書かなかった議題は、原則として当日に決議できません。「その他」で新しい議案を出せない、という意味です。
表決権は世帯ではなく個人に付く
構成員は個人で、各構成員の表決権は平等です(第260条の18第1項)。総務省の事務連絡は、表決権を世帯単位で1票とすることを原則として認めていません。
例外もあります。世帯単位で意思決定することが沿革的にも実態的にも是認され、合理的と認められる事項に限り、規約で「所属する世帯の構成員数分の1票」と定めることは可能とされています。ただし規約の変更、財産処分、解散のほか、代表者や監事の選任も、世帯単位は適当でないと整理されています。世帯で票をまとめたいときは、1人に表決権を委任する形になります。
回覧文に「1世帯1票」と書く前に、規約の表決権の条文を確認してください。Claudeにも同じ確認を頼めます。
書面決議には2つのやり方がある
令和4年の地方分権一括法(第12次)による地方自治法の改正で、総会を開かずに書面または電磁的方法で決議できる規定(第260条の19の2)が加わりました。この規定には、性格の違う第1項と第2項があります。
第1項と第2項の違い
第1項: 承諾を得てから採決する
先に「総会の場での討議を省略し、書面で決議してよいか」を全員に問います。全員の承諾が得られたら、議案への賛否を書面で問います。可決は通常の決議要件で決まるので、全員賛成でなくても可決できます。
第2項: 全員の合意で決議があったとみなす
賛否を問う書面を1回だけ回覧します。構成員全員が賛成の意思を示せば、その時点で決議があったものとみなされます。1人でも反対すれば使えません。
どちらの場合も、構成員のうち1人でも承諾しなかったり反対したりすれば、総会を開いて討議します。書面決議は総会の決議と同じ効力を持ち、総会に関する規定が準用されます。
規約変更を例にした回覧の流れ
総務省の質疑応答は、次回総会で規約変更をしたい場合を例にしています。第1項を使うと、回覧する書面は次の順に進みます。
第1項で規約変更を決議する回覧の順序
- 1
承諾を問う書面を回覧する
賛否は別として、この議題の討議を省略して書面で決議してよいか、構成員名の横に○か×を書いてもらいます。
- 2
全員が○なら、議決書面を回覧する
変更内容に異議がなければ○、あれば×を書く書面を回します。
- 3
決議要件を数える
規約の変更は総構成員の4分の3以上の同意が必要なので、○が総構成員の4分の3以上かどうかで可否が決まります。
- 4
承諾の段階で×があれば総会を開く
承諾の書面に×が1つでも戻ってきたら、通常どおり総会を開いて討議します。
第2項なら、議決書面を1回回覧するだけです。全員が○で戻れば、その時点で規約変更の決議があったことになります。×が1つでもあれば総会を開きます。
規約の変更は、決議だけでは効力が出ません。市町村長の認可を受けて初めて効力を生じます(第260条の3)。書面で全員が賛成した場合も同じです。
一括の承諾はできない
第260条の19の2の承諾や合意は、議案ごとに取る必要があります。同じ日に複数の議案を書面で決議するときも、議案ごとの承諾か合意が要ります。今後のすべての決議事項を書面で行うと、あらかじめ包括的に承諾を取ることもできません。
つまり回覧文は、議案が増えるほど書面の枚数が増えます。Claudeに議案ごとの書面を作らせると、この繰り返しの作業が一度で済みます。
総会に出られない人の書面表決は、別の仕組み
混同しやすい点です。総会を開いたうえで、欠席者が書面または代理人で表決することは、書面決議の規定とは別に認められています(第260条の18第2項)。令和3年の改正で、書面に代えて電磁的方法で表決することも規約または総会の決議により可能になりました(同条第3項)。
| 総会 | 書面・電磁的方法の使い方 | 全員の承諾 | |
|---|---|---|---|
| 欠席者の表決(第260条の18) | 総会開く | 書面・電磁的方法の使い方欠席者が表決の手段として使う | 全員の承諾不要 |
| 書面決議(第260条の19の2) | 総会開かない | 書面・電磁的方法の使い方団体の決議そのものを書面で行う | 全員の承諾必要(第1項)/全員合意(第2項) |
事例として、総務省の事務連絡には3つの団体が載っています。いずれも集合形式の総会を開いたうえで、欠席者の表決を書面や電子的方法で集めています。
| 団体 | 方法 | 総会出席 | 書面・電磁的方法 |
|---|---|---|---|
| 茨城県取手市 双葉自治会 | 方法書面表決書 | 総会出席55名 | 書面・電磁的方法書面で958名 |
| 富山県富山市 経堂新町町内会 | 方法地域交流アプリ | 総会出席31名 | 書面・電磁的方法委任123名・議決権行使54名 |
| 千葉県八千代市 緑が丘西自治会 | 方法書面とWebフォーム | 総会出席215名(オンライン6名) | 書面・電磁的方法書面589名・Web1,072名 |
数字の出所は、総務省市町村課が出した令和7年3月28日付けの事務連絡の別添です。欠席者の表決を集める方式は、いずれの団体でも総会の出席者より表決者の数のほうが多くなっています。
オンラインだけの総会については、パソコンを持たない構成員や会場への出席を希望する構成員が1人でもいるなら、会場開催かハイブリッドが必要とされています。Zoomだけで済ませる案は、議案書の段階で外しておきます。
Claudeで議案書を作る手順
ここからが実作業です。Claudeのプロジェクト機能(Projects)に規約と前年度の議案書を入れ、議案書と回覧文を同じ土台から作ります。Projectsの基本的な使い方は、PTAや町内会の文書をClaudeのProjectsで作るで説明しています。
議案書づくりの順序
- 1
資料をProjectsに入れる
自治会の規約、前年度の議案書、前年度の決算書、条文の抜粋(第260条の13から第260条の19の2まで)を入れます。条文はe-Govの法令検索からテキストをコピーします。名簿や住所録は入れません。
- 2
指示文に判定のルールを書く
次のような指示文を、Projectsの指示欄に置きます。文面は一例で、自団体の規約に合わせて直します。
- 3
議案ごとの要件表を作らせる
議案の一覧を渡して、議案ごとに決議の区分、根拠となる規約の条、必要な賛成数を表にさせます。
- 4
議案書の本文を下書きさせる
要件表を人が確認して直したあとで、議案書本文を作らせます。
- 5
通知の抜けを点検させる
議題が通知に載っているか、5日前までに通知できる日程か、規約の通知方法に合っているかを点検させます。
指示文の一例です。
あなたは認可地縁団体(自治会)の総会書類の補助担当です。
- 根拠は、添付の規約と地方自治法第260条の13〜19の2の抜粋だけ。
- 規約と条文にない要件を作らない。分からない点は「規約に記載なし」と書く。
- 議案ごとに、決議の区分・根拠条文・必要な賛成数を表にする。
- 通知に載っていない議題は、決議できない議題として警告する。
- 表決権は個人単位。世帯単位の記載があれば警告する。
- 出力は下書き。最終判断は役員が行うと明記する。要件表を作らせるときの依頼は、たとえば次のようになります。
次の議案について、規約を根拠に要件表を作ってください。
1号議案 令和○年度事業報告
2号議案 令和○年度決算報告
3号議案 令和○+1年度予算
4号議案 役員改選
5号議案 規約第○条の変更
列: 議案 / 区分 / 根拠(規約の条) / 必要な賛成数 / 通知に載せる文言
規約から根拠が取れない行は空欄にして、理由を書いてください。出力された表は、そのまま信じず、規約の該当条文と突き合わせます。規約変更の要件は、条文では総構成員の4分の3以上の同意です(第260条の3)。規約に別段の定めがあれば、その定めが優先します。この確認は、Claudeの表の「必要な賛成数」の列で最も間違いが出やすい箇所です。
書面決議の回覧文を作る
方式を決めたら、回覧文を議案ごとに作ります。Claudeに渡す情報は、議案の内容、方式(第1項か第2項か)、回収期限、返送方法の4つです。
第1項で承諾を問う書面の文案は、質疑応答の例文を元にします。次のような形になります(総務省の例文に沿った例示です)。
【第○号議案の書面決議について】
この議案に賛成か反対かは別として、総会の場での討議を省略して
書面による決議を行ってよい方は、構成員名の横の欄に○を、
総会の場で討議が必要な方は×をお書きください。
回収期限: ○月○日Claudeに作らせるときは、次の依頼が効きます。
この議案について、第260条の19の2第1項で承諾を問う書面と、
承諾後に回覧する議決書面を、別々の用紙として作ってください。
構成員名の記入欄と、○×の記入欄を付けてください。
第2項を選んだ場合の議決書面も、1枚だけ別に作ってください。1項と2項の2通りを並べて作らせると、役員会で方式を選ぶ判断材料になります。第2項は回覧が1回で済みますが、反対が1人でも出れば総会を開くことになります。反対が出そうな議案は、最初から総会に回すほうが手戻りがありません。
落とし穴
議案をまとめて承諾を取ろうとする
「今年度の決議はすべて書面で」と書いた承諾書は、議案ごとの承諾にならず、使えません。議案ごとに書面を分けるか、1枚の書面の中で議案ごとに○×の欄を設けます。Claudeに頼むときも、議案ごとに欄を立てるよう指示します。
集計と議決結果の検算
返ってきた表決書の集計は、数え間違いが起きやすい作業です。集計表は人が作り、Claudeには検算を任せると安全です。
- 表決書をExcelなどに入力し、氏名の列を除いた「議案番号・賛否・委任の有無」だけをCSVにします
- CSVをClaudeに渡し、議案ごとの賛成・反対・白紙・委任の件数を数えさせます
- 人が数えた集計と突き合わせ、ずれた議案だけ原票に戻って確かめます
総務省の事例にも、回答をデータ入力して集計している団体があります。アプリの回答をデータ出力してExcelで集計し、集計事務を効率化した例です。
判定は人が行います。たとえば、規約変更の議案で賛成が「総構成員の4分の3以上」に届いたかは、出席者数ではなく総構成員数を分母に数えます。Claudeの集計に「分母は総構成員数」と明示して頼んでください。
結果の周知文
書面決議が成立したら、結果を構成員に伝える文面が要ります。事例では、書面で議決内容を回覧したり、アプリで結果を配信したりしています。Claudeには、議案ごとの結果、賛成・反対の件数、次の手続き(規約変更なら市町村長への認可申請)の3点を入れた短い報告文を作らせます。
個人情報を入れずに頼むために
表決書には、氏名や世帯の情報が載ります。Claudeに渡すのは、議案の内容と、集計に必要な最小限の列だけにします。氏名は番号に置き換えます。前処理の考え方は、Claudeでコールセンターの応対記録を要約する手順で扱っている個人情報の伏せ方が参考になります。
議案書の型だけを他の団体の例から学びたいときは、マンション総会の議案書と議事録をClaudeで整えるも並べて読めます。マンションの管理組合は根拠法が違い、決議の要件も別です。そのまま流用せず、自団体の規約を軸にしてください。
まとめ
自治会の議案書づくりで、Claudeは条文と規約の突き合わせを速くします。ただし、書面決議で一番間違えやすいのは文章ではなく、第1項(承諾を取って通常の要件で採決)と第2項(全員合意でみなし決議)の取り違えです。この判断は、回覧文を書き始める前に役員会で決めてください。
反対が出そうな議案は総会へ、全員が賛成しそうな軽い議案は第2項へ、という振り分けが現実的です。Claudeには、その振り分け表と議案ごとの書面を用意させます。