成年後見の財産目録と収支予定表を、通帳と請求書からClaudeで下書きする
成年後見人の初回報告で出す財産目録と収支予定表を、通帳と請求書の整理からClaudeで下書きする手順です。口座を記号に置き換える前処理と、転記後の検算まで。
成年後見人に選任されると、家庭裁判所への初回報告で財産目録と収支予定表を出します。材料は通帳、保険証券、納税通知書、請求書の束です。Claudeは、この束を書式の区分に仕分けて数字を並べるところまで手伝えます。書式の記入と提出、数字の責任は後見人が負います。
この記事では、通帳のコピーを渡す前の前処理から、裁判所の書式に合わせた仕分け、転記後の検算までを順に書きます。
初回報告で出す書類と、添える資料
裁判所の後見ポータルサイトは、報告書式を初回報告と定期報告に分けて掲載しています。初回報告の欄には、後見等の事務報告書、財産目録、相続財産目録、収支予定表と、4つをまとめた「初回報告セット」(Excel、複数シート)が並びます。各書式には記載例のPDFも付いています。
書式は全国で内容が統一されています。ただし家庭裁判所によっては、統一書式に加えて追加項目の書式の提出を求めることがあります。管轄の家庭裁判所から届いた書類を、先に見ておきます。
提出物の中身は、静岡家庭裁判所の「報告書類作成の手引」が具体的です。手引は平成27年10月の改訂版で、1つの裁判所の案内です。期限や運用の細部は管轄ごとに違いうる前提で、骨格だけを借ります。
| 区分 | 書類・資料 | Claudeに見せる材料になるか |
|---|---|---|
| 必ず提出 | 書類・資料財産目録 | Claudeに見せる材料になるか通帳・証書・登記事項証明書の内容が元になる |
| 必ず提出 | 書類・資料収支予定表 | Claudeに見せる材料になるか通帳の入出金と請求書が元になる |
| 必ず添付 | 書類・資料普通預金・定期預金の通帳コピー | Claudeに見せる材料になるか渡す前に前処理が要る(後述) |
| 必ず添付 | 書類・資料株式・投資信託の取引残高報告書のコピー | Claudeに見せる材料になるか銘柄と数量の転記に使う |
| 変化があれば添付 | 書類・資料不動産の全部事項証明書、保険証券、収入・支出の資料 | Claudeに見せる材料になるか区分の振り分けに使う |
提出期限は、開始の審判書謄本に同封された「最初にお読みください。」という書面に書かれています。手引は、期限までに出さないと専門家が追加選任されたり、後見人が解任されたりすることがあると述べています。期限に間に合わない事情があれば、早めに裁判所へ連絡します。
Claudeに任せる作業と、後見人が持つ作業
収支予定表は、本人が1年間に受け取る収入と、生活にかかる費用を費目ごとに整理した年間予算です。臨時の収入や支出は書かず、毎年や毎月など定期的に見込まれるものだけを載せます。財産目録は、報告基準日時点の本人の財産をすべて一覧にした書類です。
どちらも「資料から数字を拾い、区分に振る」作業が大半です。ここがClaudeの得意な部分です。
- 任せやすい: 入出金の費目への仕分け、月ごとの金額の年額換算、財産の7区分への振り分け、資料との突き合わせ表づくり
- 後見人が決める: 基準日の残高の確定、臨時支出を入れるかどうか、本人の生活に必要な支出の水準、署名・押印と提出
数字に責任を持つのは作成者名の欄に署名する後見人です。手引も、裁判所から報告の内容について説明を求められることがあるため、提出書類のコピーと資料の原本を手元に残すよう求めています。Claudeの出力は、その説明の下書きにとどまります。
手順1: 通帳を渡す前に、口座を記号に置き換える
通帳には氏名、口座番号、取引先の名前が並びます。仕分けに必要なのは、日付、摘要、金額、残高だけです。渡す前に、次の順で絞ります。
- 本人の氏名と口座番号を隠したコピーを作る(表紙を除いて、取引履歴のページだけにする)
- 口座に「口座A」「口座B」の記号を振り、対応表を手元の紙かExcelに残す
- 摘要に家族や施設の個人名が出る行は、「家族1」「施設」のような役割名に書き換える
財産目録に本物の口座番号を書くのは、あとで手元のExcelに転記する段階です。Claudeには記号付きの資料を見せ、本物の番号は渡しません。対応表を後見人が持っていれば、戻すのは機械的な作業です。この考え方は、成績表を記号化して面談準備に使う三者面談の準備の記事や、ヒヤリハット報告の匿名化と同じ型です。
ファイルの形にも制限があります。チャットにアップロードするPDFは、100ページ以下ならテキストと画像の両方が解析されます。101ページから1000ページまではテキストだけが処理され、画像の内容は見られません。チャットに載せられるのは1回20ファイルまでです。API経由なら、パスワードや暗号化のないPDFが前提で、リクエストの上限は32MBです。
紙の通帳をスキャンした画像PDFは、画像から数字を読み取らせることになります。読み取った数字は、あとで必ず検算の対象にします。記帳済みの通帳をコピーするときは、裁判所の手引どおり、報告の前に記帳し、申立て時から現在までの取引履歴のページをすべて含めます。通帳が発行されない口座は、金融機関やネットバンキングの画面から取引履歴を出力します。
手順2: 収入と支出を、裁判所の費目に仕分ける
収支予定表の支出は、手引では生活費、療養費、住居費、税金、保険料、後見事務費の6つの費目で整理されています。収入は年金、給与、親族からの生活費、各種給付金、不動産収入、利息・配当金などです。この費目名を指示に入れておくと、仕分けの粒度が揃います。
Claudeには、次のような指示を出します。例として使える形で、実際の資料に合わせて調整します。
添付は、成年被後見人の口座A・口座Bの直近12か月分の取引履歴です。
氏名と口座番号は記号に置き換えてあります。
次の2つの表を作ってください。
1. 収入: 年金、給与、その他の費目に分け、月ごとの金額と年額を出す
2. 支出: 生活費、療養費、住居費、税金、保険料、後見事務費に分け、
月ごとの金額と年額を出す
条件:
- 費目が決められない行は、推測で振らず「未分類」に残して理由を書く
- 臨時の収入・支出と思われる行は、別の表に分ける
- 年額は、月ごとの合計を足し上げた値と、月平均×12の値を並べる
- 通帳に現れない現金払いは、私が後から入れる最後の条件が大切です。通帳に出ない現金払いの食費や日用品は、資料が存在しません。手引は、月により変動する項目は1か月の平均額を出して12を掛け、1年の予算にするよう求めています。補助シートの記載例でも、食費は「月平均37,000円×12回」で444,000円と書かれています。補助シートは予算を作るための道具で、裁判所に提出する必要はありません。
出力は、費目ごとの根拠行を確認しながら読みます。「未分類」は、医療費の領収書や納税通知書と突き合わせて、後見人が費目を決めます。通帳の引落しで支払いが確認できる項目は、領収書の添付が不要です。日常の生活費のレシート類も不要とされています。
落とし穴
臨時の支出を年間予算に混ぜると、翌年の比較がずれる
収支予定表には、定期的な収入・支出だけを書きます。入院一時金や家電の買い替えのような臨時の支出が12か月の合計に混ざると、年額が実態より大きく見えます。手順2の指示で「臨時」を別表に分けさせておけば、混ぜずに済みます。手引は、1年後の定期報告で定期的な収入・支出の変化を尋ねられるとして、収支予定表を保管するよう求めています。
手順3: 財産目録の7区分に資料を振り分ける
財産目録の記載例は、7つの区分で組まれています。
| 区分 | 載せるもの | 根拠にする資料 |
|---|---|---|
| 1預貯金・現金 | 載せるもの金融機関、支店、口座種別、口座番号、基準日の残高、管理者 | 根拠にする資料通帳、証書 |
| 2有価証券 | 載せるもの国債、投資信託、株式などの種類・銘柄・数量 | 根拠にする資料取引残高報告書 |
| 3不動産(土地) | 載せるもの所在、地番、地目、地積 | 根拠にする資料全部事項証明書 |
| 4不動産(建物) | 載せるもの所在、家屋番号、種類、床面積 | 根拠にする資料全部事項証明書 |
| 5保険契約 | 載せるもの保険会社、種類、証書番号、保険金額、受取人 | 根拠にする資料保険証券 |
| 6その他 | 載せるもの貸金債権、宝飾品、今後取得が見込まれる遺産など | 根拠にする資料評価額が分かる資料、遺産分割の協議書案 |
| 7負債 | 載せるもの債権者、内容、残額、返済月額 | 根拠にする資料契約書、請求書 |
記載例では、預貯金は報告基準日の残高を書き、通帳のコピーには番号を付けて、どの口座かが分かるようにします。有価証券は取引残高報告書の内容を、不動産は全部事項証明書の内容を、保険は保険証券の内容を写します。「その他」には、貸付金のような債権や宝飾品を入れます。宝飾品は時価評価が分かる資料のコピーを添えます。遺産分割で今後取得が見込まれる財産は、おおよその見込額と取得時期を書き、遺産分割の協議書案や固定資産税の評価証明書などのコピーを付けます。
Claudeへの指示は、区分ごとに資料を渡し、1区分ずつ表にさせる形が確かめやすいです。
添付は口座Aから口座Eまでの基準日(○年○月末)前後の取引履歴です。
財産目録の「1 預貯金・現金」の表を作ってください。
- 列: 番号、口座の記号、口座種別、基準日現在の残高
- 基準日の残高は、基準日以前で最も新しい行の「残高」を使い、
その行の日付を横に書く
- 基準日ちょうどの行が無い口座は、その旨を備考に書く
- 最後に残高の合計を出し、計算式も添える「基準日以前で最も新しい行」を指定する理由は、報告基準日が月末や任意の日になるからです。基準日の残高は、必ず基準日時点のものを書くよう記載例に注記があります。通帳に基準日の行がない口座は、日付を示して取り違いを防ぎます。
手順4: Excelに転記し、検算する
下書きができたら、裁判所の書式のExcelに後見人が転記します。初回報告セットは複数シートで、財産目録はシートが分かれています。Claudeは、表やExcelの下書きファイルも作れます。ファイル作成の機能は、Free、Pro、Max、Team、Enterpriseのすべてのプランで、Web、デスクトップ、モバイルから使えます。裁判所の書式そのものへの流し込みは、複数シートのセル位置を目で確かめながら、後見人が自分で転記します。
転記後は、数字を3か所で突き合わせます。
- 預貯金の合計: 裁判所の記載例では、預貯金が5口座で1,348,924円、2,000,000円、684,728円、97,263円、2,500,000円、現金が24,683円です。足すと6,655,598円で、記載例の合計と一致します。自分の目録でも、口座ごとの残高の合計と現金を足し、表の合計欄と照合します
- 収支予定表: 記載例の収入は年金1,450,000円と給与96,000円で合計1,546,000円です。支出は生活費720,000円、療養費352,800円、税金110,400円、保険料201,600円で、足すと1,384,800円になります。自分の表でも、費目の合計が各行の和と合うかを見ます
- 資料との照合: 通帳の最終行の残高と目録の金額が同じか、口座の記号と本物の口座番号の対応が正しいかを見ます
Claudeに「この表の合計は合っていますか」と聞くのは補助にとどまります。足し算は表計算ソフトの合計関数で出し、Claudeには合計と各行の整合の確認を頼む使い方が堅実です。計算を一緒に確かめたいときは、元の数字と計算式を出させます。
つまずきやすい点
- 基準日を取り違える: 財産目録は、審判書に同封された書面の報告基準日に合わせます。通帳の最終残高が基準日と別の日なら、基準日の行を探します
- 臨時の支出を年額に混ぜる: 手順2のとおり、定期的なものだけを入れます
- 別紙が必要になる: 財産目録の書ききれない項目は、別紙を作って目録に添付します
- 負債の資料を付け忘れる: 負債は、返済額や返済期間が分かる契約書などの写しを出します。すでに裁判所へ提出済みのものは除かれます
- 追加の書式を見落とす: 家庭裁判所によっては、統一書式のほかに追加項目の書式を求められます
- 資産が多額になった場合: 手引は、本人が成年被後見人で資産が多額になったとき、後見制度の支援信託の利用や専門職の後見人の選任に進むことがあるとしています。目録を作る段階で資産が大きいと分かったときは、早めに裁判所に相談します
専門家や家庭裁判所に聞く範囲
どの支出を生活費に入れるか、親族への貸付金をどう評価するかといった判断は、事案ごとに異なります。迷う項目は、管轄の家庭裁判所か、後見を専門とする司法書士、弁護士、社会福祉士に聞きます。Claudeに任せる範囲を下書きまでに絞る考え方は、遺言・エンディングノートの下書きや確定申告の疑問を専門家への質問リストにまとめる使い方と同じです。司法書士の業務範囲の線引きは司法書士はClaudeをどこまで使えるかにあります。
まとめ
初回報告の財産目録と収支予定表は、資料を区分に振って数字を合わせる作業が中心で、Claudeの下書きと相性が合います。通帳は記号に置き換えて渡し、本物の口座番号は手元のExcelに転記する段階で戻します。数字は合計関数と通帳の最終行で検算し、署名と提出は後見人が行います。