遺産分割協議書の作成にClaudeを使う手順 — 戸籍と一覧図から条項を組む
戸籍と法定相続情報の一覧図のPDFをClaudeに渡し、相続人と法定相続分の表を作ってから、協議内容を条項案に落とす手順です。条項の抜けを点検する依頼文と、人が確かめる箇所も示します。
遺産分割協議書の下書きは、戸籍と法定相続情報の一覧図(以下「一覧図」)のPDFをClaudeに渡し、相続人と法定相続分の表を先に作らせると進めやすくなります。誰が協議の当事者かが固まってから、財産の分け方を条項に落とす順序です。協議書は相続人全員の合意を文書にしたものなので、Claudeが作れるのは下書きまでです。この記事では、三つの段階に分けた依頼文と、人が確かめる箇所を示します。
協議書を組む材料は三つに分かれる
協議書の下書きには、性質の違う三種類の材料が要ります。どれが欠けても条項が組めません。
協議書の下書きに必要な材料
誰が相続人か
戸籍謄本の束か、一覧図の写しです。協議の当事者を確定するための材料になります。
何を分けるか
不動産の登記事項証明書、預貯金の残高がわかる書類などです。協議書の条項の中身になります。
どう分けるか
相続人同士の話し合いの結果です。これはClaudeに渡す資料ではなく、メモとして自分で文章にします。
三つ目の「どう分けるか」だけは、Claudeが埋められません。誰がどの財産を取得するかを決めるのは相続人です。Claudeに任せるのは、決まった内容を条項の形に整える作業と、条項の抜けを点検する作業になります。
不動産の名義変更に必要な書類の洗い出しは、相続登記の必要書類をClaudeで洗い出し申請書を下書きする手順で扱っています。協議書の次に申請へ進む場合は、そちらの手順につながります。
一覧図があると相続人の確認が軽くなる
一覧図は、相続関係を一覧に表した図です。相続人が戸除籍謄本等の束と一緒に登記所へ出すと、図の内容が民法の定める相続関係と合致していることを登記官が確認し、認証文を付した写しが無料で交付されます。
この写しがあると、戸籍の束を手続のたびに出し直す必要が減ります。写しを使える手続は、相続登記のほか、預金の払戻し、相続税の申告、年金等の手続などです。使えるかどうか分からない場合は、提出先に問い合わせる扱いです。
協議書づくりの側から見た利点は、相続関係がすでに一枚の図にまとまっている点です。Claudeに読ませる資料が減り、戸籍の読み違いを疑う箇所も絞れます。
一方、一覧図でわかるのは相続関係までです。財産の中身や、誰が何を取得するかは載りません。協議書に必要な財産の情報は、別の資料で補います。
法定相続情報の番号の使い方にも線引きがあります。令和6年4月1日から、登記申請書の添付情報欄に番号を書けば、一覧図の写しの添付を省略できます。ただし不動産登記以外の手続では、この番号は使えません。協議書そのものに番号は要りませんが、続けて登記を申請する場合は覚えておく点です。
Claudeに渡す前のPDFの準備
戸籍や一覧図の写しをスキャンしたPDFは、そのまま渡せます。ただし上限と条件があります。
APIの仕様では、PDFは1リクエスト32MBまで、ページ数は600ページまでです。コンテキストウィンドウが1M未満のモデルでは100ページが上限になります。パスワードや暗号化のかかっていない標準のPDFである必要もあります。
各ページは画像として処理されるため、文字の細かいページが多いと、ページ数の上限に届く前にコンテキストを使い切ることがあります。戸籍の束が分厚いときは、被相続人の分と相続人の分に分けて渡すのが安全です。チャットでの扱いはClaudeのPDF読み込み・画像解析の使い方とアップロード上限で確かめられます。
戸籍には本籍、氏名、生年月日、親族関係が載っています。入力してよい範囲はClaudeに機密情報を入力しても安全かで確認してから進めてください。
手順1: 相続人と法定相続分の表を作る
最初の依頼は、相続人の確定と相続分の表だけです。条項まで一度に頼むと、どこで読み違えたのか追えなくなります。
添付は一覧図の写し(PDF1)と、被相続人の出生から死亡までの
戸除籍謄本(PDF2〜5)です。次の表を作ってください。
1. 被相続人: 氏名・死亡年月日・本籍(記載どおり、旧字体のまま)
2. 相続人: 氏名・続柄・生年月日・出典(PDF番号とページ)
3. 一覧図と戸籍で食い違う点の一覧
推測で補わず、読めない文字は「判読不能」と書いてください。
相続分はまだ計算しないでください。効くのは「食い違う点の一覧」を別立てで頼む点です。一覧図は戸籍から作られているため、通常は一致します。それでも、戸籍の取り寄せ後に相続人の状況が変わっていないかを突き合わせる意味があります。
表が返ったら、相続人の欄を戸籍の原本で見直します。前婚の子、養子、すでに亡くなっている相続人の子(代襲相続人)が漏れていないかが要点です。
法定相続分を計算させ、検算する
相続人が固まったら、続けて法定相続分を出させます。民法900条の割合は次のとおりです。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者 | 他の相続人 |
|---|---|---|
| 子と配偶者 | 配偶者2分の1 | 他の相続人子が2分の1 |
| 配偶者と直系尊属 | 配偶者3分の2 | 他の相続人直系尊属が3分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者4分の3 | 他の相続人兄弟姉妹が4分の1 |
同じ順位の相続人が複数いるときは、そのグループの割合を人数で等分します。例外が一つあり、父母の一方だけが同じ兄弟姉妹の相続分は、父母の双方が同じ兄弟姉妹の2分の1です。亡くなった子に代わって相続する孫などは、亡くなった親が受けるはずだった割合を引き継ぎます。
上の相続人の表をもとに、民法900条・901条に沿って
各相続人の法定相続分を分数で出してください。
計算の途中(グループの割合 → 人数での按分)も書き、
最後に全員の合計が1になるか確認してください。検算の一例を示します。配偶者と、父母の双方が同じ兄弟姉妹2人、父母の一方だけが同じ兄弟姉妹1人が相続人の場合です。配偶者が4分の3、兄弟姉妹の4分の1を2対2対1で分けるので、次の割合になります。
| 相続人 | 計算 | 法定相続分 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 計算4分の3 | 法定相続分4分の3 |
| 兄弟姉妹(双方同じ)各1人 | 計算4分の1 × 5分の2 | 法定相続分10分の1 |
| 兄弟姉妹(一方のみ同じ)1人 | 計算4分の1 × 5分の1 | 法定相続分20分の1 |
合計は、3/4 + 1/10 + 1/10 + 1/20 = 1になります。Claudeの計算結果も、最後に自分で足して1になるか確かめてください。
遺産分割は、この法定相続分どおりに分ける義務があるわけではありません。協議で別の割合や分け方にしてかまいません。この表は、協議の出発点を共有するためのものです。
手順2: 協議の中身を条項に落とす
相続人の表が固まったら、決まった内容を文章で渡します。財産ごとに「誰が取得するか」を箇条書きにしたメモを、依頼文に貼る形が扱いやすい書き方です。
添付は登記事項証明書(PDF6〜7)です。
相続人の表(上記)と、次の取得内容のメモをもとに、
遺産分割協議書の条項案を作ってください。
- 自宅の土地・建物: 甲野花子が取得
- 預貯金: 乙野一郎が取得
- 乙野一郎は甲野花子に代償金を支払う(金額は空欄で残す)
不動産の表示は登記事項証明書の記載をそのまま写してください。
メモにない財産の扱いは、勝手に決めず「要確認」と書いてください。指示のうち効くのは、不動産の表示を証明書のまま写させる点です。地番や家屋番号は一字違いで別の物件になります。Claudeが整えた言い回しではなく、書類の記載と一致していることが大事です。
条項案は、例えば次のような骨格になります。文言は例示であり、実際の協議書では内容に応じて調整します。
遺産分割協議書
被相続人 甲野太郎(本籍 ○○、令和○年○月○日死亡)の遺産について、
同人の共同相続人の全員は、次のとおり遺産分割の協議を行った。
第1条 次の不動産は、甲野花子が取得する。
(不動産の表示を登記事項証明書のとおり記載する)
第2条 預貯金は、乙野一郎が取得する。
第3条 乙野一郎は、第1条の取得の代償として、
甲野花子に金○○円を支払う。
第4条 本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産は、
○○が取得する。
以上のとおり協議が成立したので、本書を作成し、
各自署名押印のうえ各1通を保有する。
令和○年○月○日
住所 ○○ 氏名 ○○ ㊞
(相続人の人数分)署名の方式、押印する印鑑、添付する書類は、協議書の使い道によって変わります。登記に使うなら申請先の法務局、預貯金なら金融機関に確認します。
手順3: 条項案をClaudeに点検させる
条項案ができたら、Claude自身に抜けを探させます。自分で書いた文章を見直す役目を別の依頼に分けると、見落としが減ります。
次の条項案を点検してください。
1. 相続人の表の全員が、署名欄・取得条項のどこかに登場するか
2. 取得者のいない財産、取得者が重複している財産がないか
3. 条項の財産の表示が、添付の登記事項証明書と一字一句一致するか
4. 代償金や後日判明した財産など、定めが空欄のまま残る箇所
問題のある箇所は、条番号を挙げて理由を書いてください。
直すのではなく、指摘だけにしてください。「指摘だけ」と頼むのは、勝手に書き換えられると変更点が追えなくなるためです。指摘を見て、直すかどうかは自分で決めます。
協議の前提が変わる場面を先に知っておく
協議書を組み始めてから、前提が崩れる場面があります。民法の条文から、よく出る五つを挙げます。
- 遺言で相続分や分け方が指定されている(902条、908条)
- 相続人の一人が生前に贈与や遺贈を受けている(903条)
- 相続人に未成年者がいて、親も相続人である(826条)
- 協議がまとまらない(907条2項)
- 遺産の分割を一定期間しない約束をしている(908条)
遺言で相続分の指定や分割方法の指定があれば、法定相続分とは別の出発点になります。被相続人が遺言で、相続開始から5年を超えない期間、分割を禁じていることもあります。
生前贈与や遺贈を受けた相続人がいる場合は、特別受益として相続分の計算が変わります。贈与の価額を相続財産に加えて計算し、その相続人の取り分からは贈与分が引かれます。Claudeに計算させる前に、該当する贈与があるかを相続人同士で確かめる段階が先です。
未成年の子と親が一緒に相続人になる場合は、親と子の利益が相反します。民法826条は、このとき親権者が家庭裁判所に特別代理人の選任を請求するよう定めています。子が複数いて、その一人と他の子の利益が相反する場合も同じです。協議書の署名欄を埋める前に、署名する人の資格を確認する必要があります。
協議が整わない、または協議ができない場合は、各共同相続人が分割を家庭裁判所に請求できます。ここから先は話し合いの下書きの段階ではないので、Claudeの出番ではなく、専門家に相談する場面です。
また、協議が成立した分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって生じます。ただし、第三者の権利を害することはできません。協議書を作る前に、相続財産がすでに処分されていないか確認しておくと安心です。
人が目で確かめる箇所
Claudeの出力は、そのまま協議書にはなりません。次の項目は、書類の原本と照らして自分で確かめます。
協議書の下書きで目視する箇所
- 相続人の氏名・続柄が、戸籍および一覧図の記載と一字一句同じか
- 法定相続分の合計が1になるか(表の再計算は自分でも行う)
- 不動産の所在・地番・家屋番号が、登記事項証明書と同じか
- 取得者が決まっていない財産や、二重に取得者が書かれた財産がないか
- 代償金や後日判明した財産の条項が、空欄や「要確認」のまま残っていないか
- 署名押印する人が、協議書に名前のある相続人全員と一致するか
相続人が多い、連絡のつかない相続人がいる、財産の評価で意見が割れているといった状況では、手順1の表までを作って専門家に渡すと相談が進みます。表に出典が付いているので、確認の手間が減ります。
協議書が完成して不動産の名義を変えるときは、登記申請書の作成に進みます。一覧図の写しや法定相続情報の番号をどう添えるかは、相続登記の必要書類をClaudeで洗い出す記事の手順が続きになります。相続の期限や放棄など、協議より前の整理はClaudeで相続の基礎知識を整理する方法が入口です。