Claudeで士業の広告規制をチェックする手順 — ホームページ文言を一覧で点検
弁護士の業務広告規程と指針、税理士の会則をProjectに置き、サイトの「必ず」「最安」「無料相談」「解決実績」を条文つきで点検する手順です。
士業事務所のホームページとブログを広告規制に照らして点検するなら、規程と指針の全文をClaudeのProjectに置き、サイトの文言を一覧にして貼る形が扱いやすくなります。Claudeには「表現ごとに、どの条文に当たり得るか、どう書き換えるか」を表で返させます。最終判断は人と所属会に残します。
この記事では、弁護士の全国組織である日弁連の「弁護士等の業務広告に関する規程」と「業務広告に関する指針」を軸に、「必ず」「最安」「無料相談」「解決実績」の4種類の文言をどう点検するかを順に見ます。税理士など他の士業は、置く資料の選び方を後半で扱います。
弁護士の広告は「規程」と「指針」の二層で読む
弁護士の広告規制の本体は、日弁連の会規「弁護士等の業務広告に関する規程」です。広告そのものは自由で、禁止される類型が列挙されています。
規程第3条が禁じる広告は次の7類型です。
規程第3条が禁じる広告
1〜2号 事実との合致
事実に合致していない広告と、誤導または誤認のおそれのある広告です。
3〜4号 期待と不安
誇大または過度な期待を抱かせる広告と、困惑させ、または過度な不安をあおる広告です。
5号 比較
特定の弁護士や事務所と比較した広告です。
6〜7号 法令違反と品位
法令や会則・会規に違反する広告と、弁護士の品位や信用を損なうおそれのある広告です。
第4条は、表示そのものができない事項を定めています。訴訟の勝訴率、顧問先または依頼者、受任中の事件、過去に取り扱い・関与した事件です。顧問先や依頼者、事件は、書面または電磁的方法による同意がある場合などの例外があります。この第4条第2号から第4号の改正部分は、令和8年4月1日から施行されています。
条文は抽象的です。そこで効いてくるのが、規程第13条に基づいて会長が定める「業務広告に関する指針」です。指針には違反となる具体的な表現が例示され、令和8年2月19日にも改正が入っています。点検で実際に使うのは、条文よりも指針の例示のほうです。
指針の考え方で押さえておきたい点が2つあります。1つは、品位を弁護士の立場ではなく、受け手である国民から見て信頼を損なうかどうかで判断するという点です。もう1つは、誤導や誇大にあたる例について「記載された事項が事実に合致する内容を含むか否かを問わない」と明記している点です。事実を書いているから大丈夫、とは言えません。
サイトの文言を4種類に分けて照合する
ホームページの文言を、指針の例示と突き合わせた早見表です。指針に出ている表現はそのまま引用し、指針に例がないものは規程のどの号の問題になり得るかだけを書いています。
| サイトの文言 | 当たり得る規定と指針の例示 | 書き換えの方向 |
|---|---|---|
| 「必ず解決します」 | 当たり得る規定と指針の例示第3条第3号。指針は「当事務所ではどんな事件でも解決してみせます。」を例示し、「常勝」「不敗」など結果を保証させる用語にも注意を求めています | 書き換えの方向取扱分野と対応の進め方を、事実の範囲で書く |
| 「最安」「業界最低水準の報酬」 | 当たり得る規定と指針の例示第3条第2号。指針の例示に「業界最低水準の弁護士報酬」「割安な報酬で事件を受けます。」があります。他事務所を指すなら第5号にも | 書き換えの方向着手金・報酬金の金額と算定方法を具体的に示す |
| 「着手金0円」 | 当たり得る規定と指針の例示第3条第2号。手数料や管理料を別途受け取るのに明瞭な表示がない場合が、指針の想定です | 書き換えの方向別途かかる費用と実費の扱いを同じ場所に書く |
| 「無料相談」 | 当たり得る規定と指針の例示指針の例示に同じ語はありません。無料の範囲が曖昧だと第2号の誤認のおそれが問われます | 書き換えの方向時間・回数・対象事件など、無料の範囲を明記する |
| 「解決実績○○件」「勝訴率」 | 当たり得る規定と指針の例示勝訴率は第4条第1号で表示不可。実績は、架空や脚色なら第3条第1号に当たります | 書き換えの方向件数の算定根拠を台帳に残し、勝訴率は載せない |
| 「お客様の声」 | 当たり得る規定と指針の例示第3条第1号。指針は、実在の依頼者が関与していない文章の掲載を虚偽の例に挙げています | 書き換えの方向依頼者の同意書面と原文を残し、無いものは載せない |
| 「専門」「エキスパート」 | 当たり得る規定と指針の例示指針は、専門分野の判定が困難として表示を控えるのが望ましいとします。エキスパートも同様です | 書き換えの方向「取扱い分野」「得意分野」「積極的に取り組んでいる分野」に置き換える |
「専門」の行の補足です。スペシャリストとプロも、指針は同じ扱いです。「得意分野」は主観的評価として許容されます。「解決実績」では、依頼者や過去の事件が特定される書き方なら第4条も関わります。
「無料相談」の行に、指針の例示がないことを書いたのには理由があります。ここは条文の当てはめで判断が割れ得る箇所で、Claudeに「違反です」と言い切らせると誤った安心にも誤った萎縮にもなります。Claudeの出力でも、この行は「判断が分かれる」と表示させるのが適切です。
通信手段で法律事務を受任する広告には、さらに義務があります。規程第9条の2は、受任する法律事務の表示と範囲、報酬の種類・金額・算定方法・支払時期、委任契約の解除ができる旨と中途終了時の清算方法を、広告に表示するよう求めています。フォームやチャットで依頼を受け付けるサイトでは、この表示が揃っているかも点検項目になります。
「事実に合致」は証明を求められる
第3条第1号については、運用面で見落としやすい規定があります。規程第12条は、広告が第1号に該当する疑いがあるとき、弁護士会が内容が事実に合致することの証明を求められるとしています。証明できなかった場合、弁護士会は第1号に該当するものとみなすことができます。
さらに第11条は、広告物の記録のほか、広告業者との契約書や入出金の記録などを広告終了から3年間保存するよう定めます。このうち広告業者との契約や入出金に関する部分は令和8年7月1日から施行されています。点検表に「根拠資料の保管場所」の列を足しておくと、文言の見直しと保存義務の確認が一度に済みます。
Projectに置く資料と指示文を決める
ClaudeのProjectsは、独立した作業スペースに資料(ナレッジ)と指示(プロジェクト指示)を持たせる機能です。Projectsは無料プランを含む全ユーザーが使え、無料プランでは作成できるプロジェクトは5つまでです。有料プランではナレッジが大きくなるとRAG(検索拡張生成)が自動で有効になり、容量が最大10倍まで広がります。規程と指針、各会の会則を何本も置く用途には、有料プランのほうが余裕があります。
TeamとEnterpriseでは、Projectsを組織内のメンバーに共有できます。権限は閲覧(Can view)と編集(Can edit)の2段階です。事務所で点検の基準を揃えるなら、資料を差し替えられる人を絞って編集権限を与え、他の所員は閲覧にします。
なお、Projectsには新しいバージョンがベータとして順次展開されていて、利用できるかどうかはアカウントによって異なります。ここで説明するのは、資料と指示を持たせる従来の使い方です。
置く資料は次の4種類です。
- 弁護士等の業務広告に関する規程(日弁連の会規のPDF)
- 業務広告に関する指針(日弁連のPDF。改正日をファイル名に入れる)
- 所属弁護士会が出している広告関係の案内や届出の様式
- 自事務所の広告方針と、過去に点検を終えた文言の一覧
指針は平成24年の全部改正のあと、平成26年、30年、令和3年、7年、8年と改正されています。Projectに古い版が残ったままだと、Claudeは古い基準で答えます。差し替えは自動では行われないので、年に数回は日弁連の会規・指針のページを開いて版を確かめる運用にしておきます。
指示文は、条文の捏造を防ぐことを最優先に書きます。次は書き方の一例です。
あなたは弁護士事務所の広告点検の補助です。
判断の根拠にしてよいのは、このProjectの資料に書かれた条文と指針の例示だけです。
資料に無い規定は「資料に記載なし」と答え、条番号を推測で補わないでください。
入力された文言ごとに、次の列の表で返してください。
文言 / 該当し得る規程の号 / 指針の該当箇所(資料内の見出しを引用) /
リスク(高・中・判断が分かれる・低) / 書き換え案 / 事実の裏付けとして必要な資料
「違反です」と断定せず、最終判断は弁護士会への確認が必要と末尾に書いてください。「指針の該当箇所を資料内の見出しで引用させる」のが要です。見出しを引用できない行は、Claudeが資料から離れて答えた可能性があるので、人が最初に疑う対象になります。
ホームページとブログの文言を点検する手順
点検の流れ
- 1
文言を洗い出す
トップページ、取扱分野、料金、事務所紹介、ブログ記事から、数字・最上級・保証・費用に関わる文を抜き出し、ページのURLと一緒に1行ずつ並べます。依頼者が特定できる情報は、この段階で伏せます。
- 2
Projectに貼って表にさせる
洗い出した一覧を貼り、上の指示文で表にさせます。長い一覧は、料金・実績・プロフィールのように分けて渡すと、行の取りこぼしが減ります。
- 3
引用された見出しを資料で確かめる
表の「指針の該当箇所」に書かれた見出しが、実際にProjectの資料にあるか、人の目で開いて突き合わせます。条番号と号が資料と一致しない行は、その場で差し戻します。
- 4
書き換え案を選び、根拠資料を残す
書き換え案は、事実で言い切れる形のものを採用します。実績や件数を残す文言は、算定根拠を台帳に保存します。
ブログは見落とされやすい箇所です。指針は、特定の法律問題を解説する動画やSNS投稿に連絡先を載せること自体は、顧客誘引が主たる目的とは必ずしも判断されないとしています。ただし、末尾に「○○の相談は当事務所へ」のような誘引文言を置くと広告として扱われ得るとも述べています。解説記事そのものは自由に書けますが、記事の終わりの一文は点検対象に入れておきます。
弁護士以外の士業は、置く資料を入れ替える
手順は同じで、入れ替わるのは資料です。ここで大事なのは、士業ごとに広告のルールの置き場所が違うことです。
税理士の場合、税理士法には広告を直接規制する条文が置かれていません。関わるのは、第37条の「税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない」という信用失墜行為の禁止です。加えて、税理士会の全国組織である日税連の会則には、不当勧誘、不当広告、報酬額の不明示その他、相手方等の利益を害するおそれがある行為の禁止(第59条の2)が置かれています。条番号は平成27年7月23日付の会則によるもので、改正で動くことがあります。Projectには最新の会則と、所属税理士会の規則を入れてください。
税理士の場合、弁護士のような指針の例示表はありません。Claudeに「最安は不当広告か」と聞いても、資料に判断基準がなければ「資料に記載なし」と返るのが正しい挙動です。この場合は、次の景品表示法の観点で点検の軸を補います。
士業を問わず適用される法令として、景品表示法第5条があります。実際より著しく優良であると示す表示(優良誤認)と、価格などの取引条件が著しく有利であると誤認される表示(有利誤認)が禁じられています。「最安」「No.1」のように比較を含む文言は、士業会の規律とは別に、この観点でも根拠を問われます。ステルスマーケティングの観点はステマ規制のPR表記漏れをClaudeで点検する方法で整理しています。
司法書士や行政書士、社会保険労務士のホームページでも、置くべき資料は同じ考え方で決まります。
- 所属する会の会則・規程の最新版を、その会の公開ページから入手する
- 会が出している広告関係の指針やQ&Aがあれば併せて置く
- 資料に無い規定は答えさせない指示文を維持する
隣接する分野の点検は、薬機法の広告NG表現のチェックや、不動産広告のチェックが参考になります。いずれも、規制の本体を資料として持たせ、表現ごとに根拠を問う点は共通です。
Claudeに任せない線を決めておく
広告の点検は、Claudeが下書きを作り、人が責任を持つ分担にします。任せない部分は3つあります。
1つ目は、最終判断です。指針は国民から見た印象で判断するとしているため、表現の細かな文脈で結論が変わります。判断が分かれる行は、所属弁護士会への確認や、事務所内の責任者の判断に回します。
2つ目は、事実の裏付けです。Claudeは件数や実績が本当かどうかを知りません。規程第12条のとおり、証明を求められるのは広告をした側です。実績の件数、経歴、受賞歴は、元の記録に当たって人が確かめます。
3つ目は、依頼者の情報です。実績の元になる事件記録をProjectに入れないでください。依頼者の同意の有無を確認する作業は人が行い、Claudeには匿名化した文言だけを渡します。守秘義務との関係は、弁護士の守秘義務とClaudeへの入力と弁護士がClaudeで生成AIを使う際の注意点に詳しくまとめています。税理士の場合は税理士のClaude利用と守秘義務が対応します。
よくある質問
広告の代行会社が作ったページも点検の対象ですか。
対象です。指針は、広告の主体を広告全体から判断するとしており、著名人や依頼者などの第三者の談話・推薦文が載っていても、全体として弁護士が行っていると認められれば弁護士の広告として扱います。さらに規程第8条は、第三者が行う規程に抵触する情報の伝達に、利益の供与や協力をすることを禁じています。委託先のページも同じ表で点検します。
点検結果の表は、そのまま保存してよいですか。
表は、見直しの記録として使えます。ただし、Claudeが引用した条文は人が資料と突き合わせたあとの版を保存してください。規程第11条の保存義務の対象は、広告物や広告業者との契約書などで、Claudeの出力表ではありません。